助成研究成果報告書Vol29
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3.研究成果 − 266 −ージにより移動させることでレーザーの焦点位置を動かしてSUS球を逐次動かしCASガラスへと移した.CASガラスへSUS球を導入した後,すぐにレーザーを切りSUS球を停止させた.その後,レーザーを再照射してSUS球をCASガラス内部で移動させた.SUS球の運動をCCDカメラ(LUMIX DMC-G6, Panasonic)で横方向から撮影した.撮影した画像をフリーソフトImageJで解析し,各時間におけるSUSの移動距離を計測した. 2.3 SUS球の移動した軌跡に形成されるCaO-Al2O3-SiO2ガラス内部の変質部の評価 電子線マイクロアナライザー(EPMA:Electron probe micro-analyzer(JXA-8200, JEOL))により,CW-LBI法によりCASガラス内部に形成した変質部の組成の変化を評価した.SUS球の移動方向に対して垂直または水平に試料を切断し,表面を平滑に研磨した面の定性および定量分析を行った. 3.1 CASガラスへのSUS球の導入 図2は,SUS球の移動過程を透過照明系で撮影したスナップショットである.図2(a)および(b)はそれぞれレーザー照射パワー密度が32kW/cm2および62kW/cm2の画像である.低いパワー密度(32kW/cm2)の場合,CASガラス中のSUS球はレーザー照射と同時にゆっくりと動き始める.その全ての軌跡は画像の暗い部分となって確認できる.一方,高いパワー密度(62kW/cm2以上)のレーザーを照射した場合,照射開始直後にSUS球は急速に移動しその後減速する.移動開始直後のガラスには光学的な変質部は確認できないが,減速していくにつれて画像の暗部として視認できるようになる.レーザー照射パワーに応じてSUS球の運動は異なり,それに応じて光学特性の異なる変質部が形成されることがわかる. 3.2 CASガラス内部におけるSUS球の運動解析 図3は,横方向からSUS球の位置を捉えた画像を解析し,照射開始後の移動距離を時間に対してプロットしたものである.図3(a)および(b)のレーザー照射パワー密度はそれぞれ32kW/cm2および62kW/cm2である.SUS球の位置の時間に対する差分を計算することで図4の速度の時間変化を得た.図4(a)は照射パワー密度が32kW/cm2で直径約42µmのSUS球の時間に対する速度の変化である.SUS球はレーザー照射開始とともに徐々に加速し,8秒後に最高速度23µm/secに到達した後減速していく.照射パワー密度が62kW/cm2の場合(図4(b)),移動開始直後のSUS球の速度が速すぎて移動開始直後の加速領域を捉えることができなかったが,図4(a)と同様に照射直後に加速して最高速度に到達した後,減速していくことがわかる. CW-LBI法では,金属球がレーザー光を吸収し加熱され,その熱が周囲のガラスに伝わることでガラスの温度が上昇する.軟化点以上の高温になったガラスを金属球が押しのけながらレーザー光源方向へ移動しているものと考えられている5).抵抗力を受けながら移動する物体の減速は,加速度が速度に比例している場合には粘性抵抗が支配的であり,加速度が速度の2乗に比例する場合には慣性抵抗が支配的であることが知られている.図5に,照射パワー密度32kW/cm2,直径約42µmのSUS球の加速度を速度に対してプロットした.この図から,SUS球の加速度は,移動開始直後は一定で加速していき,速度の2乗に比例して減速した後,速度に比例して減速していく.つまり,CWレーザー照射によるSUS球の運動は,レーザー照射開始直後は等加速度運動で加速し,その後慣性抵抗続いて粘性抵抗を受けながら減速していくことがわかる.物体の運動が粘性力または慣性力のいずれに支配されるかは,レイノルズ数

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