助成研究成果報告書Vol29
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キーワード:CWレーザー,ガラス,内部改質 2.実験方法 − 265 −wave laser backside irradiation: CWレーザー背面照射法)は,ガラスの背面に金属箔を密着させガラス越しに高出力のCWレーザーを集光照射することで,ガラス内部にライン状の変質部を形成する手法である.変質部の形成プロセスとしては,(1)透明材料内部へのレーザー照射によるフィラメンテーション現象1)と,(2)レーザー照射により金属微粒子が形成しガラス内部に導入されてレーザー光源方向に移動する現象2)の2種類が報告されている.いずれの現象でも,ガラスの内部に光学的に検知可能な変質部が形成される.前者の現象によりシリカガラス内部に仮想温度の異なる領域をライン状に形成できることがわかっている.後者の金属微粒子の移動によってもガラス内部の改質が可能で,レーザー照射によって金属微粒子が高温に加熱され,周囲のガラスを軟化させながら移動することで変質部が形成される.この変質部はガラスが高温・高圧状態に置かれたことで生成された相となる. 我々は,CW-LBI法により誘起される金属微粒子の移動によるガラスの内部改質に着目した.高温・高圧環境下でガラス内部に引き起こされる構造変化を利用して局所的に組成変動や結晶析出を促すことで機能性材料を創出することを目指している.本研究では,母ガラス組成としてCaO-Al2O3-SiO2系を対象とし,CW-LBI法によるSUS球の導入および移動によりガラス内部にライン状の変質部を形成する.このガラス系は,マグマやスラグの構成成分であり地球科学や鉄鋼材料における研究対象とされ,物性や構造に関する知見が広く調査されている3).また,ゲーレナイト(Ca2Al2SiO7)のような圧電結晶4)を含む系でもあり,機能性材料として興味深い組成系となりえる.本報告では,CW-LBI法によるガラスを基板とした機能性材料の作製に向けて,CWレーザー照射による金属球の運動解析と,それによって誘起されるガラスの組成変化について述べる. 2.1 CaO-Al2O3-SiO2ガラスの作製 30CaO-10Al2O3-60SiO2[mol%]ガラス(以下,CASガラス)を通常の溶融急冷法により作製した.得られるガラスが100gとなるように,ガラス原料(CaCO3,Al2O3およびSiO2)を秤量し,ガラス乳鉢を用いてエタノールにより湿式混合1.研究の目的と背景 比田井ら1)によって開発されたCW-LBI法(Continuous 東京工業大学 物質理工学院・材料系 (平成26年度 奨励研究助成AF-2014225) 助教 岸 哲生 した.このバッチを白金ルツボに入れ,1550ºCで1時間溶融しグラッシーカーボン板上に流し出して急冷した.ガラスの均質性を高めるために2次溶融を行った.細かく粉砕したガラスを再び白金ルツボに入れ1550ºCで3時間溶融し,グラッシーカーボン板上に流し出した.その後,速やかに760ºCの徐冷炉に移して1時間保持した後,毎分1ºCで室温まで冷却した.得られたガラスを20mm四方,厚さ4mmの板状に切り出し,レーザー照射および内部観察のために4面を研磨して鏡面とした. 2.2 CW-LBI法によるCaO-Al2O3-SiO2ガラスへのSUS球の導入と移動 CASガラスに直接SUS箔を押し付けてSUS球を導入しようとしたところ,ガラスが割れてしまった.そこで,まずパイレックスガラス(Pyrex®,Corning 7440, Corning Inc.)にSUS球を導入してCASガラスにSUS球を移し変えた.図1に本研究で用いた光学系の模式図を示す.厚さ0.01mmのSUS304(Nilaco Corp.)箔をPyrexガラスに密着させ,箔とパイレックスガラス接触面の反対面にCASガラスを設置した.波長1064nmのCWレーザー(RFL-C020/A/2/A , Wuhan Raycus Fiber Laser Technologies)をレンズ(NYTL-30-40PY1,Sigma Koki Co., Ltd.)により集光しCASガラスおよびPyrexガラス越しにSUS箔に照射した.SUSはレーザー光を吸収し加熱されて溶融しPyrexガラスに半径数十µmの球として導入された.この球はレーザー光源方向に自発的に移動しレーザーの焦点位置から離れていき,パワー密度が十分に低下した地点に到達すると停止する.試料を固定している治具を電動ステCW-LBI法によるガラス内部への 強誘電性結晶微細パターンの形成

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