図1 FSW模式図. キーワード:金属間化合物,テーラードブランク,結晶方位解析 1.背景 − 250 −2.1 TWBの作製 摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding,以下FSW)は,図1のように回転させたツールを材料中に挿入し,そのときに発生する摩擦熱により材料を軟化させ且つ攪拌しながら接合する技術である.FSWは,材料を溶融しない固相接合法の一つであるので,溶融溶接では困難な組合せの材料も接合可能である.本研究では,鉄とアルミニウムの板材をFSWにより突合せ接合し, 1μm以下の厚さに制御したFe-Al系IMC層を接合界面に有するTWBを作製した.板材の材質は,A1100-OとSS400で,いずれも長さ300mm×幅85mm×厚さ3mmの帯板を突合せ,長さ方向に接合した.FSWに使用したツールは,ショルダ径12mm,プローブ長2.9mmで,プローブにはM4のねじ加工を施している.接合条件は,ツール回転数1400rpm,接合速度100mm/minとした.また,接合時のツールの中心位置は,鉄とアルミニウムの突合せ面直上ではなく,アルミニウム側にややシフトさせ,プローブが鉄側に約0.2mm接触する位置に挿入した. 2.2 TWBの評価 TWBは,厚さ2mmになるように板の表裏0.5mmずつを切削し,図2のように接合方向と引張方向を一致させ,且つ接合界面が幅方向の中央に位置するように引張試験片を作製して,引張試験を実施した.引張試験前後のTWBは,FE-SEM(JEOL製JSM-6301F),TEM(JEOL製JEM-2000FX)及びEBSD(TSL製OIM-7)を用いて接合界面の詳細な観察および解析を実施した.EBSD解析に際しては,TWBの場合,機械研磨や電解研磨では良好な試料を準備できないため,断面試料作製装置(JEOL製IB-09010CP)を使用して,イオンビームにより断面を加工した. 材料の高強度化は近年の趨勢であるが,これらの材料は延性,靭性に乏しくなると考えられ,塑性加工がより困難になる.鉄鋼材料においても,焼入れによりマルテンサイト変態すると,硬くなる一方で,延性は著しく乏しくなるというのが一般的な常識である.しかしながら,Nambuらは,変形能が乏しいマルテンサイト鋼を,高延性鋼で挟んで複層板を作製して変形させることで,マルテンサイト鋼を50%以上塑性変形させることに成功した1).この現象は,これまで限定的な検討に留まっていたマルテンサイト組織の変形挙動に関して,飛躍的な成果を得るきっかけになったことに留まらず,脆性材料として取り扱われていた材料であっても,本質的には優れた塑性変形能を発揮できる可能性を秘めていることを意味し,高強度材料の延性向上を目指すにあたり非常に興味深い成果である. 金属間化合物(Intermetallic Compound,以下IMC)は,軽量で高温強度や耐酸化性に優れ,非常に魅力的な材料である.一方,IMCの塑性変形能に関しては,基礎となる結晶構造が,fcc,bccあるいはhcpといった通常の金属あるいは合金の構造であれば,その構造の結晶塑性が反映されると期待できるが,実際は大半のIMCが非常に脆く,安全重視の構造部材においては,その適用は限定的である. しかしながら,単体では脆性を示すIMCであるが,延性に優れた異なる金属を,薄いIMC層を介して接合した状態にあるテーラードブランク(Tailor-welded Blank,以下TWB)においては,二軸変形下の大変形も可能であることがわかった2).即ち,IMCであっても,本質的には大変形できる可能性が示唆されることに加え,これまで検討不十分であった大ひずみ領域でのIMCの変形挙動を詳細に解析できれば,IMCの欠点である延性不足を著しく改善できる新たな知見の獲得も期待できる.そこで本研究では,伸びや強靭さといった金属材料の普遍的な性質を確保しながら,軽量で熱に強いIMCを開発するために,大ひずみ領域でのIMCの変形挙動の詳細な解析を通して,結晶学的観点から塑性変形能に優れたIMCの設計指針を構築することを目指した. 2.実験方法 本研究では,基礎となる結晶構造が比較的高い対称性を有し,塑性変形が期待できるFe-Al系IMCに注目した.ただし,通常のIMC単体は,大変形させることが困難であるため,鉄とアルミニウムのTWBを用いて研究を行った. 大阪府立産業技術総合研究所 金属材料科 (平成26年度奨励研究助成AF-2014034) 主任研究員 平田 智丈 Fe-Al系金属間化合物の大ひずみ領域での変形挙動に関する研究
元のページ ../index.html#260