4. 結言 − 249 −謝 辞 参考文献 低温寒剤浸漬処理による硬度変化から換算した応力と穿孔法から得られた圧縮残留応力がおおよそ一致することがわかった. 3.3 極低温寒剤浸漬処理による硬度変化の考察 極低温寒剤による浸漬処理がマグネシウム合金の硬度向上に寄与するかどうかを考察する.まず硬度データのt検定による統計処理解析によれば,ビッカース硬度結果の誤差範囲であるという結果となった.また引張試験から得られるヤング率,降伏点,n値,加工硬化挙動の調査結果を総合し,内因的要因による硬度変化とはいいがたい結果が得られた.一方,本研究の浸漬実験によって生じる圧縮残留応力をひずみゲージを用いた穿孔法で求めた結果,圧縮残留応力とビッカース硬度の変化が定性的に一致したことから,極低温寒剤浸漬処理による硬度変化は,外因的要因による影響が大きいと考えられる.しかしながら,Aslら8)はAZ91Dマグネシウム合金に極低温寒剤による浸漬処理を行い,Mg-Al系介在物であるβ粒子(Mg17Al12)がマトリックスであるα相内に浸透し,β粒子の形態が変化することを報告している.そしてその変化に伴い,特にクリープ特性の向上と表面の摩耗性の変化があったとしている.また,Gariboldiら9)はAZ91Dマグネシウム合金のクリープ挙動の改善に極低温処理(Deep Cryogenic Treatment; DCT)を提案し,クリープ特性の変化が微細なβ粒子がDCTによって変化するからと報告している.ともにクリープ特性の変化を内因的要因による変化として取り扱っていた.またこれらの研究は,極低温寒剤による試料の平均的な降温速度および昇温速度を8.3×10-3 K/secとして実施されている.本研究は液体窒素寒剤であれば350倍以上、液体ヘリウムでは40倍以上も早く降温および昇温速度で極低温処理を行っており,その点については注意を要するものの,極低温処理の速度とβ粒子等の試料性状との関連性の調査が必要である.今後,十分なミクロ組織観察によるβ粒子の変化の調査が新たな課題であり,それに伴う力学的性質について検討したい. 本研究では,AZ31BおよびAZ91Dマグネシウム合金に対して液体窒素ならびに液体ヘリウムの極低温寒剤を用いた浸漬処理を行った.両試料の塑性変形挙動を包括的に理解するため,硬度変化の他に延性や加工硬化挙動の調査を行い,内因的要因の観点からの評価を行った.また外因的要因の可能性を調査するため,ひずみゲージを用いた残留応力の測定も行った.本研究にて得られた結果を以下にまとめる. 1)極低温寒剤による一定時間の浸漬処理後のマグネシウム合金の硬度変化についてt検定による統計処理解析を行ったところ,ビッカース硬度結果の誤差範囲であるという結果となった. 2) 極低温寒剤浸漬処理後に引張試験を行い,ヤング率,降伏点,n値,加工硬化挙動の調査結果を総合し,内因的要因による硬度変化とはいいがたいという結果が得られた. 3)圧縮残留応力とビッカース硬度の変化が定性的に一致したことから,極低温寒剤浸漬処理による硬度変化は,外因的要因による影響が大きいと考えられる. 本研究は天田財団の奨励研究助成(AF-2014033)によって行われました.ここに付記し,財団および関係各位に深く感謝の意を表します.また豊橋技術科学大学三浦博己教授,小林正和准教授にはマグネシウム合金に関するご助言等を多数いただきました.厚く御礼申し上げます. 1) 久本隆之,高野宰,伊藤真人:ハイドレート生成圧搾装置で製造したCO2ハイドレートの基礎特性,三井造船技法, No.211, pp.7-12, 2014. 2) 井田博之,水上剛志,池田純亮:ネオホワイトハイドレート法による二酸化炭素分離・回収技術, JFE技報, No.32, pp.50-53, 2013. 3)A.Takahashi, M.Kobayashi : Low Temperature Toughness of AZ61 Magnesium Alloy, Proceedings of the 3rd JTSTE, Vol.3 pp.153-156, 2015. 4)A.Takahashi, N.Yamamoto and T.Toshinobu : Fundamental Study on Impact Toughness of Magnesium Alloy at Cryogenic Temperature, International Journal of Innovations in Engineering and Technology, Special issue, pp.1-6, 2015. 5)谷啓貴,小林正和,青葉知弥,三浦博己,高橋明宏 : 降温多軸鍛造AZ80Mg合金の衝撃破壊挙動に関する研究, 軽金属学会第129回講演会概要集,pp.357-358, 2015. 6)三上隆男 : 穿孔法による残留応力測定について(その1), IIC REVIEW, No.48, PP.53-65, 2012. 7)佐藤四郎,遠藤隆 : アルミニウム合金の引張強さと硬さの関係, 軽金属, NO.36, pp.29-35. 1986. 8)Kaveh Meshinchi Asl, Alireza Tari and Farzad Khomamizadeh : Effect of Deep Cryogenic Treatment on microstructure, Creep and wear behaviors of AZ91 Magnesium alloy, Materials Science and Engineering A, No.523, pp.27-31, 2009. 9)E.Gariboldi, Q.Ge, N.Lecis, S.Spigarelli and M.EI Methtedi : Creep Behavior of Deep Cryogenic Treated AZ91 Magnesium Alloy, Metallurgical Science and Technology, Vol.30, pp.19-27, 2012. N.Yamamoto, T.Toshinobu and
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