キーワード:半溶融プロセシング,高合金工具鋼,微細組織 (平成26年度奨励研究助成 AF-2014032) − 240 −法によって行なわれている。その方法は加工時間が長く,高エネルギーと資源を浪費し,環境汚染を引き起こす。本研究は、1)金属の半溶融処理技術に基づき、鋳造鉄鋼材料の樹枝状組織を微細化する機構を明らかにし、2)新しい工具鋼の生産方法を開発し、3)従来法で生産した市販材と同等の機械的特性値を持つ鉄鋼材料を製造する。すなわち熱間ダイス鋼SKD61鋼について、鋳造材を出発点として、3時間程度の予加工+半溶融処理+1パス熱間圧延によって、従前の24時間の高温加熱・20パス以上の熱間圧延(合計で50時間程度)と代替し得る(時間・エネルギー1/10)ことを見出す。 工具鋼はCr-Mo-Vを添加物とする高合金鋼であり、金型や切削工具に広く適用されている。この工具鋼の研究開発および製造技術においては、我が国はドイツや米国と並び世界のトップグループを形成している。工具鋼の示す優れた耐熱性(結晶の熱的安定性)や耐摩耗性は、工具鋼の微細なミクロ結晶構造と、その粒界や粒内に形成される安定なナノサイズ炭化物(VC等)によってもたらされている。我が国は鉄鋼製造工業の大国であり、総出荷額は11兆2,291億円,従業員数は74,403人である。我が国の製造1.研究の目的と背景 現在、我が国の工具鋼の生産は多パス熱間圧延による方図1.従来の工具鋼生産方法と提案する工具鋼生産方法 東京大学 生産技術研究所 特任助教 孟 毅 現場において大量に消費されている工具鋼のミクロ結晶構造の制御とナノサイズ炭化物の分散および形態の制御は、ナノサイズ炭化物があまりにも安定であるが故に多数の工程とエネルギーを必要としているのが現状である。具体的に言えば、24時間の高温加熱でバナジュームを固溶させ、さらに再結晶による結晶粒の微細化を行うために20パス以上の熱間圧延を行う工程を利用することを強いられ、長い加工時間と高エネルギーを浪費している。そのため、抜本的な対策が求められている。 半溶融金属中に離散する球状固相粒子は液相の基質に分布する。球状の微細構造を持つ半溶融金属は調節可能な流動性、および制御可能な粘度など様々な優れた特性を示すことが知られている。均質な半固体球状微細構造を得るために、種々の方法が世界の研究者によって開発されつつある。設備と工具材料の低負荷の要求を満たす、RAP(再結晶と部分溶融)方法は、鉄鋼材料のこのような要求に適している。 RAP処理は温間加工と加熱処理を利用して金属材料の再結晶と部分溶融を引き起こし、均一球状の半溶融状態の微細組織を得る方法である。RAP処理に基づいて、新しい工具鋼生産方法を提案する。新しい工具鋼生産方法を図1に示す。粗い樹状微細構造を持つインゴット鋳造鉄鋼ビレ 問体系化と技術開発に関する研究 半溶融プロセシングによる高合金工具鋼の省エネルギー製造の学
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