影響を調査した.ワイヤは施工方向前方から挿入し,挿入角度は45とした.ワイヤ電流は,後述の適正加熱電流実験および推定から得られた結果をもとに,ワイヤ種類とワイヤ送給速度に応じた適正値を設定した. 図2 施工条件の概要図 2.3 評価方法 作製した積層体に,ワイヤの飛び出しや形状の不連続が見られるものは外観評価を×とし,外観の良好な積層体(●)のみ断面形状とうの評価を実施した. 各種パラメータの影響調査や適正条件の導出には,3層の積層体を用いた.長さ125mmの積層体を形成し,施工開始位置から40mm,60mm,80mmの3断面を観察した.図3に断面形状の評価法を示す.最大高さ(Maximum height),有効高さ(Effective height),有効幅(Effective width)を計測し,ニアネットシェイプ率(Near net shape rate)を最終的な評価パラメータとして採用した. 3層の積層体形成で導出した適正条件を用い,11〜15層の積層体を作製し,積層体長さ方向から試験片を切り出して,引張試験を実施した. 図3 断面形状評価法 表1 施工条件 各ワイヤ送給速度においてワイヤ先端が溶融池直下まで適正に加熱できた(ワイヤの溶断および突きが生じない)電流を適正値とした.電気抵抗値が大きく異なる4種類の各ワイヤで,5〜20m/min(NCU-Mの場合2.5〜10m/min)の幅広いワイヤ送給速度範囲での適正電流を得ることができた. 図4 適正ワイヤ電流計測結果および計算結果 ワイヤの加熱・送給時の温度分布を推定する簡易手法を検討した.ワイヤの通電領域を0.1mmに分割し,「電気抵抗によるジュール発熱」,「ワイヤ周辺への放熱」,「ワイヤとコンタクトチップの接触抵抗によるジュール発熱」を考慮して,分割した0.1mmごとの温度上昇(ΔT)を計算する.通電領域端(ワイヤ先端)での温度が,各ワイヤの融点近傍となる電流値を算出した.計算には,接触抵抗,ならびに温度依存を考慮した電気抵抗率,比熱,比重を用いた.計算結果を,図4中に◇印で示す.電気抵抗値が大きく異なる4種類の各ワイヤで,5〜20m/min(NCU-Mの場合2.5〜10m/min)の幅広いワイヤ送給速度範囲での適正電流を制度良く推定できている. 3.2 SUS308Lワイヤでの検討 SUS308Lワイヤを用いて,各パラメータが施工現象および積層体形状に及ぼす影響を調査し,適正施工条件の導出を行った.施工条件を表2に示す.ワイヤ送給比(ワイヤ送給速度/施工速度),施工速度,レーザ出力の3パラメータに注目し,それぞれ他の2パラメータを固定した状態で変化させた. 各パラメータの影響の検討前に,施工可能(外観試験で不良の無い良好な積層体外観が得られる)範囲を調査した結果を図5に示す.ワイヤ送給比を固定(単位長さあたりの積層量を固定)した場合の各施工速度において,また施工速度を固定した場合の各ワイヤ送給比において,施工可能なレーザ出力最小値を得ることができた. 3.実験結果および考察 3.1 適正ワイヤ電流の計測および計算 4種類の各ワイヤを用い,5〜20m/min(NCU-Mの場合2.5〜10m/min)の各ワイヤ送給速度での適正電流を計測した.図4に,各ワイヤでの計測結果を●印で示す.レーザを照射せず,通電したワイヤのみを母材表面に送給し,Number of layers Laser spot size, mm Laser irradiating angle, deg. Laser power, kW Defocus amount, mm Process speed, m/min Wire feeding speed, m/min Wire feeding rate Wire current, A Wire feeding angle, deg. Shielding gas (Ar), l/min 1~15 2×3, 1.6×6, 1.6×11 5, 10 1.875~6.0 0 0.1~0.6 1~20 2.5~40 0~364 45 5~30 - 86 -
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