に本プロセスを用い,オーステナイト系ステンレス鋼上に5000系アルミニウム合金を積層造形する異材AMについて検討した結果についても報告する. ドおよびワイヤトーチは固定し,試験片をスライダに設置した治具に固定して移動させた.シールドにはArガスを用いた. 図2に施工条件の概要図を,施工条件を表1に示す.矩形レーザスポットを適用し,長辺がビード幅方向になるように照射した.スポット形状は1.6×11mmを基本とし,積層幅制御確認のために2×3mmおよび1.6×6mmと変化させての実験も実施した.レーザ出力,施工速度,ワイヤ送給速度を種々変化させて,施工安定生,積層体形状への図1 実験システム外観 Review高出力半導体レーザとホットワイヤ法とを組み合わせた高能率マルチマテリアルAM技術の開発山本 元道*M. Yamamoto*広島大学大学院 先進理工学系科学研究科 教授 山本 元道* ででくくだだささいい り,一部の高価な材料を用いた小型製品製造には既に適用され始めている1〜10).一方,低施工能率,金属粉末の低い溶着効率,欠陥生成リスク,金属粉末の価格,厚肉製品や大型製品への適用が困難などの問題を有しており,今後の一般製品製造への広がりのある適用拡大は困難な状況にある.さらに,高出力・高品質化および低価格化の著しい近赤外領域波長のファイバーレーザが一般に用いられているが,Al合金やCu合金などの材料では固相での吸収率が低く,当該材料のAM技術はグリーンレーザやブルーレーザを用いて検討されている.また,アーク熱源(TIG溶接,MIG溶接など)を用いたAM技術も一部開発・実用化されており,施工能率向上,ワイヤ材料の適用などのメリットが得られているものの,スパッタ・ヒュームの発生,アーク現象・入熱制御の困難さ,適用ワイヤの制約,酸化・窒化などの問題を抱えている11〜15). 著者らは長年,ホットワイヤ法とレーザ熱源とを組み合わせた溶接・接合技術の開発を行ってきた16〜21).ホットワイヤ法では,ワイヤをジュール発熱によって通電加熱し,融点直下まで効率的に温度を上昇させた添加材料を供給できる.また,製品の目的に応じた専用のワイヤはもとより,一般の多種多様な金属ワイヤのほぼ全てが使用可能であり大幅な製造コストの低減が期待できる.半導体レーザはファイバーレーザなどと異なり,ビーム品質は劣るものの,比較的容易に任意のスポット形状を形成でき,そのスポット内のエネルギー分布も制御が容易である.ホットワイヤ法と半導体レーザ熱源とを組み合わせることで,低入熱,高能率な積層造形が可能になると考えられる.さらに,スパッタ・ヒュームの発生や酸化・窒化も大幅に抑制でき,溶着効率はほぼ100%であるため,現状のAM手法に比べて10倍以上の施工能率が期待できる.本特徴を積極的に活用することで,現在は鋳造や切削,小型部品の組み合わせでのみ製造可能で,既存AM技術では製造困難である厚肉・大型部品の製造が可能になる. 本報では,高出力半導体レーザとホットワイヤ法を組み合わせたAM技術を用い,種々のワイヤでの施工現象観察,適正条件導出を実施した結果について報告する.さら写写真真位位置置 削削除除ししなないい1.まえがき 一般的な金属粉末を用いたAM(アディティブ・マニュファクチャリング)技術では種々の可能性が検討されてお2.供試材料および実験条件 2.1 供試材料 供試ワイヤには,SUS308L(直径1.2mm),Inconel625(直径1.2mm),A5356WY(直径1.2mm),NCU-M(直径1.2mm)を用いた.母材には,板厚9〜24mmの400〜490MPa級鋼板(SUS308L,SUS630,NCU-M用),板厚20mmのA5083O(A5356WY用)を供試した. 2.2 実験条件 図1に,実験システムの外観を示す.熱源には,定格出力6kWの半導体レーザを用いた.施工中は,高速度カメラを用いて溶融池形成およびホットワイヤ送給状況を観察した.レーザ照明(808nm)とバンドパスフィルタを用い,溶接方向前方(溶融前方)から撮影した.レーザヘッ- 85 -高出力半導体レーザとホットワイヤ法とを組み合わせた高能率マルチマテリアルAM技術の開発
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