図9 作製した金属メッシュ透明導電性膜を介して青色LEDが点灯している様子 本研究では,銀イオン含有ポリマーを用いてレーザー光還元法によりサブミクロン線幅の配線を有する金属メッシュ透明導電性膜を作製した.波長405 nmのCWレーザーを銀イオン含有ポリイミド前駆体に集光照射し銀細線を作製した.作製された銀細線のEDSエネルギースペクトルピークは銀のLαエネルギー2.984 keVに現れ,レーザー光還元法により作製された構造が銀であることを実証した. レーザー光還元法により作製された銀細線の線幅についてレーザーパワー・走査速度依存性を調べた.銀細線の線幅はレーザーパワーの減少及び走査速度の増加により微細化した.レーザーパワー1.0 mW,走査速度100 µm/secの条件にて作製された銀細線は最小線幅0.8 µmを達成した.レーザーパワー2.0 mW,走査速度10 µm/secの条件にて作製された銀細線の線幅はアニール(300 ℃,2h)により1.4 µmから1.0 µmへ微細化した. レーザー光還元法により作製された銀細線の抵抗率についてレーザーパワー・走査速度依存性を調べた.銀細線の抵抗率はレーザーパワーの増加,走査速度の減少及びアニール(300 ℃,2h)により低抵抗率化した.レーザーパワー2.0 mW,走査速度1.0 µm/sec,アニール300 ℃,2 hの条件にて作製された線幅1.0 µmの銀細線は最小抵抗率20.1 µΩcmを達成した. レーザー光還元法によりガラス基板上にメタルメッシュ構造を作製した.線幅1.0 µm,メッシュ間隔20 µm,30 µm,40 µmにて作製されたメタルメッシュ構造の可視光透過率は83%,90%,93%であり,透明電極として実用可能な透過率80%以上を達成した.メッシュ間隔20 µm,30 µm,40 µmにて作製されたメタルメッシュ構造のシート抵抗値は11.6 Ω/sq,21.4 Ω/sq,24.2 Ω/sqと実測された.現行のITO透明電極に対して高い可視光透過率及び低いシート抵抗値を達成した. 本研究成果より,従来のリソグラフィ技術やインクジェット技術では達成困難であったサブミクロンオーダーの金属メッシュ作製技術を確立した.本技術はマスクレス・作製されていることが分かる.それぞれの可視光透過率は,可視域平均にて,83%,90%,93%となった.作製したメッシュ構造の電流電圧特性を計測し,シート抵抗値を算出した.算出したシート抵抗値と透過率とをプロットした結果を図8に示す.一般的なITO透明電極よりも優れた透過率とシート抵抗値であることが分かる. 最近の研究成果として,これまで光学顕微鏡ベースにて基礎特性を評価していたのに対し,企業との共同研究開発により,レーザー光源をモジュール化し,ロングストロークリニアXY軸駆動ステージを導入した大面積レーザー描画システムを開発した.本システムを用いて作製した銀メッシュ透明導電膜を介して青色LEDが点灯する様子をデモンストレーションした(図9).基板サイズは3×3 cmであり,下地の文字が認識できる.基板の両端にて青色LEDを接続し,点灯する様子を示した.レーザー光還元法による肉眼にて目視不可能な銀細線にて構成された銀メッシュパターンが,透明性かつ導電性を有することを実証した. 図7 (a)-(c)作製した金属メッシュ構造の光学顕微鏡画像 (d)透過スペクトル メッシュ間隔(a) 20 µm,(b) 30 µm,(c) 40 µm 図8 可視光透過率とシート抵抗値の関係 5.結論 - 83 -
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