FORM TECH REVIEW_vol33
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性より,抵抗率3.48×10-7 Ω∙mを達成した.2016年に中国科学院大学のZhao氏らは硝酸銀,アンモニア,N-デカノイルサルコシンを混合した銀イオン水溶液を光還元剤として用い,フェムト秒パルスレーザー照射によりガラス基板上にメタルメッシュ構造を作製した[7].作製されたメタルメッシュ構造はシート抵抗値47 Ω/sq,可視光透過率93%であった.銀細線の線幅は0.5 µm,厚さは200 nm,抵抗率8.8×10-7 〜1.1×10-6 Ω∙mであり,レーザー光還元法がサブミクロンスケールの微細金属配線作製手法として適することが示された. 以上に示した通り,レーザー光還元法は光還元剤へのレーザー集光照射のみにより金属パターンを作製する技術である.マスクレスかつ簡便なパターニング技術であるため,昨今の主流である少量多品種な製品生産体制に対応できる.さらに作製される金属構造はサブミクロンスケールまで微細化が可能である.サブミクロン配線を有するメタルメッシュ透明電極の新たな開発技術として実用化が期待されている. 本研究では,半導体CWレーザー(波長405 nm,OBIS FP 405 LX, Coherent)を光源とした照射光学系を構築し(図2),レーザー光還元法により銀細線を作製した.倒立顕微光学系をベースとし,レーザーが裏面から照射されるように光学系を構築した.電動ステージおよび電動シャッターを用いて,任意の照射時間,速度にて細線を描画した.レーザーパワーは,可変NDフィルターにより調整し,対物レンズ手前の光強度をパワーメータにて計測した. 銀イオン含有ポリイミドをガラス基板上にスピンコートにより塗布し,薄膜形成した.膜厚はおよそ300 nm程度とした.プリベーク後,CWレーザーを集光照射し,銀イオン含有ポリイミド前駆体に銀のメッシュパターンを作製した.作製した銀細線の線幅および抵抗率評価のため,未露光部のポリマーを除去した.作製した銀細線の線幅,高さ,長さについて,それぞれSEM,AFM, 光学顕微鏡に 図2 レーザー光還元光学系 て観察,計測した.作製した銀細線の両端に電極パッドを真空蒸着により形成し,4端子法により電流電圧特性を計測し,作製した銀細線の導電性を実証した. 図3は,レーザーパワー1.2 mW,走査速度10 µm/secの条件にて作製した銀細線のSEM像を示す.線幅は0.93 µmであり,レーザー光還元法によりサブミクロン線幅の銀細線が作製されることを実証した.拡大SEMより,粒子状の銀が凝集析出し,ラインを形成していることが分かる. 図4は,レーザーパワー1.0 mW,走査速度30 µm/secの条件にて作製した銀細線のSEM像およびエネルギー分散型X線分析(EDS: Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)画像を示す.銀のLαの特性X線エネルギーである2.984 keVにてマッピングした.作製構造と一致する場所において信号が強く検出されていることが分かる.これらの結果より,レーザー光還元法により作製された構造主成分が銀であることを実証した. レーザーパワーおよび走査速度に対する銀細線の線幅依存性を調べた.図5は,レーザーパワー1.0 mW〜5.0 mW,走査速度1.0 µm/sec〜100 µm/secの条件にて作製したレーザーパワー・走査速度に対する銀細線の線幅依存性を示す. 図3 作製した銀細線SEM像 図4 (a)作製した銀細線SEM画像 レーザーパワー1.2 mW, 走査速度10 µm/sec レーザーパワー1.0 mW,走査速度30 µm/sec (b)作製した銀細線(a)のEDS原子マッピング画像 2.984 keVにてマッピング 2.実験方法 3.レーザー光還元法による銀細線作製結果 - 81 -

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