FORM TECH REVIEW_vol33
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できなかったが,ナノ秒レーザを組み合わせることで(211)面,(100)面に対しても剥離できた. ピコ秒レーザ照射では,照射間隔を適切に選定することで,独立した変質線を形成すると同時に,その間に亀裂を形成することで,(211)面での剥離を実現した. 本法では剥離面に対して,平行にレーザ照射する方法について,紹介した.一般的にレーザによる剥離では,レーザ光を剥離面に直交する方向から入射し,剥離面に対して並行に走査することで,剥離をする方法が一般的である.本法では,レンズのワーキングディスタンスの大きさまでしか剥離できない制約がある.しかし,少ないカーフロスでの剥離が実現できる.これは,変質層はレーザの光軸方向に長く,直交する方向に小さく形成できるためである.対象の大きさによって,使い分けることでより効率的な加工が期待される. より実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします. Wikstrom, D. J. Twitchen, A. J. Whitehead, S. E. Coe and G. A. Scarsbrook, Science 297, 1670 (2002). 2) C. J. Chu, M. P. Develyn, R. H. Hauge and J. L. Margrave, J. Appl. Phys. 70, 1695 (1991). 3) C. J. H. Wort, C. S. J. Pickles, A. C. Beale, C. G. Sweeney, M. R. McClymont, R. J. Saunders, R. S. Sussmann and K. L. Lewis, Recent advances in the quality of CVD diamond optical components, SPIE, 3705 (1999), doi: 10.1117/12.354615. 4) C. J. H. Wort and R. S. Balmer, Mater. Today 11, 22 (2008). 5) H. Umezawa, Y. Mokuno, H. Yamada, A. Chayahara and S. Shikata, Diamond Rel. Mater. 19, 208 (2010). 6) H. Yamada, A. Chayahara, Y. Mokuno, H. Umezawa, S. Shikata and N. Fujimori, Appl. Phys. Exp. 3 (2010). 7) H. Yamada, A. Chayahara, Y. Mokuno, N. Tsubouchi and S. Shikata, Diamond Rel. Mater. 33, 27 (2013). 8) J. Smedley, J. Bohon, Q. Wu and T. Rao, J. Appl. Phys. 105 (2009). 9) H. Ohfuji, T. Okuchi, S. Odake, H. Kagi, H. Sumiya and T. Irifune, Diamond Rel. Mater. 19, 1040 (2010). 10) T. Okuchi, H. Ohfuji, S. Odake, H. Kagi, S. Nagatomo, M. Sugata and H. Sumiya, Appl.Phys. 96, 833 (2009). Modification & crack 100m 100m (b) 4.結言 (a) 実験2の結果から,内部変質周囲の亀裂は劈開面である(111)面に沿って周期的に生成されている.しかし,図図99(b)にはレーザ走査方向とは垂直方向に不規則な亀裂が生成されている.剥離面と同様な条件である図図22(c),(e)では不規則な亀裂は確認できないため,走査回数が増えるとある地点から大きな亀裂が発生し,そこから連続的に,隣に作製した内部変質が影響を受けることがわかる.これにより,変質間の亀裂が少しずつ隣り合う変質線に影響し,外部から観察困難な欠陥を蓄積していることが考えられる.安定的な大面積剥離加工へと応用する際への課題である. Modification Cutting area Unexpected 図9 剥離面の光学顕微鏡写真 (a)反射構造観察結果, (b)剥離されたダイヤモンド表面の顕微鏡像 ([18]より許諾転載) 3.4 まとめ (1) ピコ秒パルスレーザを用いてダイヤモンド内部変質を面状に作製した.断面亀裂形状の観察により,亀裂が(111)面に生成され,また連続していることを確認した.亀裂の剥離方向への最大高さは約15 µmであった. (2) 内部変質面を作製し,部分的に剥離することに成功した.最大粗さは約32 µmであり,剥離時の材料損失は被剥離面と合わせて60 µm程度である. ダイヤモンドの剥離を目的として,フェムト秒レーザとナノ秒レーザ照射を組み合わせる方法,ピコ秒レーザ照射のみによる方法の2つを紹介した. フェムト秒レーザ照射だけでは,(111)面のみしか剥離謝 辞 本研究は,公益財団法人天田財団からの一般研究助成に参考文献 1) J. Isberg, J. Hammersberg, E. Johansson, T. - 78 -

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