(a-2) ナノ秒レーザ 照射前 (共焦点顕微鏡像) 間隔で複数回繰り返して,面状の変質層を形成した.このような経路で走査するのは,加工点より手前にグラファイト変質がある場合,レーザ光が遮られ内部加工現象が起こらないため,またレーザが変質の進展と同軸で入射し続けると,変質の進展が連続しやすいためである.走査速度は100 µm/s, パルスエネルギーは2 µJで加工した.走査する線同士の間隔は,線状のグラファイト変質がオーバーラップするよう,幅5 µmに設定した.変質層はダイヤモンドの(211)面上に形成した. 2.2 変質層の形成 内部加工によって形成されたグラファイト変質層を,レーザ照射側から観察した側面の写真を図図33(a)に,正面の写真を図図33(b)に示す.図図33(a)に示すように,試料内部に厚さ15 µmのグラファイト変質層が形成された.しかし,図図33(b)では,グラファイト変質層にµmオーダーの未変質部分が走査方向とピッチ方向に沿って残存している.未変質部分は,走査速度,走査ピッチ,集光レンズを変えた場合も,変質層内に残存した. ピッチ方向の未質部の残存は,隣の変質によりレーザ照射が妨げられることに起因すると考えられる.本研究で目的とするダイヤモンドの分離では,グラファイト変質層は均質に形成されている必要があるため,後述する2.4では,この未変質部分をさらに変質させる加工を行った. 2.3 剥離実験 ダイヤモンドのグラファイト化による強度低下を利用し,変質の境界部分にドライバーとハンマーで衝撃を与え,分離を試みた.変質部に衝撃を与えることでダイヤモンドの剥離を試みた.剥離は(111),(211),(100)の結晶面に変質層を形成した試料のそれぞれに対して行った.(111)は劈開面と呼ばれ元々分離しやすく,(211)は(111)に直交する面である.(100)は研磨が容易で,半導体応用に適している.その結果,劈開面である(111)に沿って変質形成した試料のみが分離した. 2.4 レーザ再照射による剥離 変質層のグラファイトは,周囲の未変質のダイヤモンドよりレーザ光の吸収率が高くなっている.この点を利用して,変質層の法線方向からレーザを照射し,既存の変質を広げる手法を試みた.使用したレーザの仕様を表1(ii)に示す.パルスは2 µm毎に照射し,列同士の間隔は4 µm,パルスエネルギーは2 µJとした.その結果,レーザ再照射による分離は,すべての結晶面に対して剥離できた.ただし,(100)については,1 mm×1 mmの面積のうち一部のみしか剥離しなかった.(211)に形成した変質層の断面を,レーザ再照射前後で比較したものを図図44に示す.図図44(a)の透過照明の顕微鏡画像で示した変質層の位置に,レーザ再照射後の4(b)では上側にクラックが生じた.つぎに,剥離させた試料の表面の顕微鏡画像と電子顕微鏡画像を図図55に示す.図図55(c)(f)に示すように,剥離後の表面には方向性を持った模様が観察された.表面上の模様は,細かい劈開に起因すると考えられる.このレーザ再照射により(a)側面観察 (a-1) ナノ秒レーザ 照射前 (透過光像) - 75 -(b)正面観察 (b) ナノ秒レーザ 照射後 (共焦点顕微鏡像) Laser source Pockels cell PBS 図2 フェムト秒レーザによる変質層形成装置模式図 ([17]より許諾転載) Graphite 図3 ダイヤモンド内部に形成したグラファイト層 パルスエネルギー:2 µJ/pulse,走査速度:100 µm/s,走査ピッチ:5 µm,レーザ照射面は(111)面と直交する Graphite 図4 ナノ秒レーザ照射前後の側面観察像変質層は (211)面に形成されている.([17]より許諾転載) (211), (111), (100)面いずれも剥離でき,レーザ再照射によってへき界面以外でも剥離は可能となった. Microscopic camera Half-wave plate Sample diamond CamerObjective lens (a) Laser Laser Scanni50 μm 50 µm Sample Moving Light Graphite (b) 10 µm Micro 50 µm
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