dw=35 µm dw=25 µm dw=15 µm iii tnop-1tnop-3tnop-53-point 5-point CGH Scanning direction Irradiation direction Scanning direction ①Start ②Center Top view ③End 図8 多点集光に用いたCGFと集光位置配置 3.3 3点集光における溶融領域形状 図図99に3点集光によって1枚のガラス内部に形成された溶融痕をレーザ光走査方向から観察した結果を示す.図より,分岐した各集光点間の距離dwが小さくなるほど丸みを帯びた溶融領域が形成された.また,溶融領域内部でレーザ光エネルギーが直接吸収されたと推測される縦長の高密度領域となっているレーザ光吸収点移動軌跡痕の形状がdw = 15 µmとdw = 25, 35 µmでは異なっている.dw = 25, 35 µmにおいては,各集光点におけるレーザ光吸収点軌跡はレーザ光照射軸に対して上方に移動した状態であるのに対し,dw = 15 µmでは,左右のレーザ光吸収点は中心方向に引き寄せられながら上方に移動した軌跡を示している.これは分岐したレーザ光が極近傍に位置するため,高強度領域が重複する中心方向へレーザ光のエネルギー吸収点が誘導されたためだと考えられる.dw = 15, 25, 35 µmのいずれでも,図図66で示す1点集光時とは異なる丸みを帯びた溶融領域形状が形成されたことから,空間光位相変調器による多点分岐集光を適切に制御することは,集光点近傍のエネルギー分布や応力状態の制御に繋がることが期待される. 図9 3点集光により形成される溶融ビード断面 3.4 集光点配置が溶融領域形成に及ぼす影響 図図1100に1点集光,3点集光,5点集光でレーザ光走査速度60mm/sで2枚のガラス界面にレーザ光走査したときの溶融ビードを上部から観察した結果を示す.1点集光ではパルスエネルギー4.5µJ,3点集光では1.5µJを3箇4.おわりに 所に,5点集光では1.0µJを5箇所に照射して総投入エネルギーが同等になるようにした.1点集光では溶融ビードの全体でクラックが発生した.一方,3点集光では溶融ビードの終端部のみでクラックが発生し,5点集光では溶融ビード全体でクラックが発生しなかった.これは,レーザ光を多点分岐することによってエネルギーを分散したことで溶融部の急激な温度上昇が抑制されたと考えられる.また,走査方向前後にレーザ光を配置した5点集光では,前方のレーザ光が予熱として機能し急激な温度上昇を抑制したことや,後方のレーザ光が後熱として機能し冷却時間が長く維持されることによって,発生する応力を抑制されたと考えられる.また,1点集光と比較して溶融ビード幅が全領域で一様に大きく,大きなパルスエネルギーを投入することで従来と比べて1スキャンにて大きな溶接ビード幅を得つつクラックを抑制できる可能性が示された. 図10 各種集光位置配置と溶融領域形成の状態 本報では,高パルス繰り返しピコ秒パルスレーザによるガラス/Siおよびガラス/ガラスの微細溶融接合法に関して述べた. ガラス/Siの微細溶融溶接においては,Siで大きな光吸収率を示す緑色波長より低吸収率の近赤外波長の方が,ナノ秒よりもピコ秒パルスレーザを用いた方が溶融物の飛散を抑制できる.さらに,適切なレーザパルス照射数を用いるとアンカー効果が期待できるような接合部が形成され,非常に強固な接合を実現できることを明らかとした. さらに,ピコ秒パルスレーザを用いた本手法をガラス/ガラスの微細溶融溶接に適応するにあたって,LCOS-SLMを用いた次世代手法の可能性を述べた.LCOS-SLMを用いてレーザ光を多点分岐することは溶接時の応力状態の改善につながることから,ピコ秒パルスレーザによるガラスの溶接特性向上が期待されることを示した. 本手法は非線形現象など複雑な現象を含んだプロセスであるが,空間位相変調器を用いることによりプロセス制御性向上などが期待できることから,本報で報告した内容が半導体産業や電気電子部品産業の一助になれば幸いである. - 71 -
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