る4, 5).この吸収レーザ光エネルギーを熱源としてガラスる6).しかし,高強度な超短パルスレーザをガラス内部にReport高繰り返しピコ秒パルスレーザによるガラス/Siおよびガラス/ガラスの微細溶融接合法岡本 康寛*Y. Okamoto*岡山大学学術研究院自然科学学域 准教授 2.ガラスとSiの微細溶融溶接 岡本 康寛 ででくくだだささいい 情報化社会が進む今日,各種センシングに対する要望が高まるとともに,デジタルデータの保存・活用があらゆる分野で求められるようになってきた.センシングには半導体センサが必要不可欠であり,それらを安定的に使用するためにガラス等で封止する必要がある.したがって,空間自由度が高く,高信頼性が得られる単結晶Siとガラスの接合法が求められてくる.加えて,インターポーザ材料としてガラス基板が用いられることが期待されており,ガラスと各種半導体材料の接合技術が重要になると考えられる.一般に,Siとガラスの接合には陽極接合が多用されており,約400度に加熱してガラス側に500V程度の負電圧を印加することで一括接合できる 1-3).しかし,高温下で高電圧を印加することから内部の電子回路へ悪影響を及ぼす危険性があり,接合に必要な時間も一般的に長い. 一方,10ピコ秒程度のレーザ光パルスを用いて微細スポットに集光すると,その瞬間的なパワー密度が大きくなることから,透明体材料であっても一部のレーザ光は非線形吸収現象によりガラスへ直接的にエネルギー吸収され材料を溶融させることで半導体材料とガラス基板を接合する.すなわち,10ピコ秒程度のパルスレーザによる瞬間的な熱源を用いることで,ガラス同士の接合と同様に脆性材料である半導体材料とガラス基板を高品位に接合できる可能性がある.さらに,半導体基板での線形吸収とガラス内部での非線形吸収の混在する本手法は,作動距離の大きな集光レンズと高繰り返しレーザを用いることで高いプロセス速度と自由度が期待できる.これにより,陽極接合に劣らないプロセス速度を達成し,空間選択的な接合となることから電子回路に及ぼす影響も低減できる.そこで,従来の陽極接合に代わる新たな接合法としてピコ秒レーザを用いた単結晶Siとガラス基板の直接接合法の開発を行った. また,本手法はガラス同士の接合にも展開が期待されることから,中間層を用いずにガラス同士を直接接合できる手法として検討を行ってきた.パルス繰り返し数10kHzまでであれば,集光点近傍で非線形光吸収現象が生じるのみであるが,パルス繰り返し数を数百kHz程度まで大きくすると非線形吸収によって生じた集光点近傍から熱伝写写真真位位置置 削削除除ししなないい1.はじめに 導によってその周囲の微小領域を溶融させることができ集光させた際,集光点近傍でのエネルギー集中にともなう溶融時の急激な温度変化による大きな応力に起因するクラック発生の要因となり,接合品質が低下することが懸念される.ところで,空間光位相変調器(SLM: Spatial Light Modulator)は計算機合成ホログラム(CGH: Computer Generated Hologram)を入力することでレーザ光の波面や集光特性を任意に変調することができる7).この集光性制御手法を用いてレーザ光を多点分岐してガラス内部に集光することは,ガラス溶接時におけるエネルギー分散や温度分布と応力状態を制御することが期待できることから,クラック発生の抑制につながると考えられる.そこで,空間光位相変調器によるエネルギー分布制御を用いてガラスの微細溶接を試み,次世代の接合手法としての可能性に関しても検討を行った. 2.1 実験方法 レーザ光源として,波長532nmおよび波長1064nmのナノ秒パルスレーザとピコ秒パルレーザの合計4種類を用いた.それらのレーザ光を図図11((aa))に示すように,ガラスと単結晶Siの境界面へガラス基板側より集光スポット直径は約20µmで照射した.単結晶Siとガラスの境界面は,オプティカルコンタクトが得られるように重ね合わせた.しかし,その大きすぎるオプティカルコンタクト領域はせん断強度の評価に大きく影響を及ぼすことが明かとなっている4).そこで,接合領域を特定できるようにするためにSi製のマスクを作製した上より,未処理面へ汚染やダメージを及ぼさない反応性イオンエッチング(C2F6, 6.7Pa, 20sccm)により,幅1mm,長さ20mmのオプティカルコンタクト領域を作製した.この領域にレーザ光照射条件を変化させて溶接ビードを形成した.試料には厚さ0.675mm,比抵抗10-2Ω・cm,(100)面のP型単結晶Si,厚さ1.0mmの陽極接合用ガラス(SW-Y, Asahi Glass Company),および厚さ1.1mmのホウ珪酸ガラス(D263, Schott)を用いた.せん断試験には単結晶Siの線膨張係数に合わせて調整された陽極接合用ガラスSW-Yを,溶接ビード断面の観察を行う場合は主にホウ珪酸ガラスD263を使用した. - 68 -ガラス/Siおよびガラス/ガラスの微細溶融接合高繰り返しピコ秒パルスレーザによる
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