FORM TECH REVIEW_vol33
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1.まえがき さらに、厚み50 μm以下の薄板ガラスの需要と市場の可能性が注目されており、旭硝子、日本電気硝子、GLAShernなどの主要ガラスメーカーを含む数十社が、この分野の生産技術および生産能力の向上に力を注いでいる。その結果、市場には厚さ4 μmの超薄板ガラスも登場しており、このレベルに達すると、ガラスはフィルム状となり、自在に曲げることが可能となる。 このように超薄板ガラスは優れた強度、電気特性、耐久性を兼ね備えており、柔軟性と設計の自由度が高いデバイスの開発を可能にする。例えば、金属膜やNVダイヤモンドなどを超薄板ガラスにドーピングし、フレキシブルセンサー、や量子センサーなど、多様なセンサー・デバイスが開発された。 図2. 超薄板ガラスの加工における破損の原因。 (a) MEMS 技術を使用して、Cr および Au で二重成膜した超薄板ガラスの写真。ここでは破損は確認されていない。(b) ドライおよびウェットエッチング工程において破壊された超薄板ガラスの写真。(c) エッチング前のガラス表面の顕微鏡写真。微小なクラックが確認でき、これが破損の原因となることがわかる。 しかし、従来のガラス加工技術には課題があり、前処理やハンドリング、洗浄など多くの工程を伴うため、加工中Reportフェムト秒レーザーを用いた超薄板ガラスのナノスケール加工とその応用Yalikun Yaxiaer(ヤリクン ヤシャイラ)*Y. Yaxiaer*奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学領域 准教授キーワード:フェムト秒レーザー,超薄板ガラス,微細加工,センサー 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学領域 准教授 ヤリクン ヤシャイラ ( Yalikun Yaxiaer ) キーワード:フェムト秒レーザー,超薄板ガラス,微細加工, センサー ガラス材料は、透明性、優れた耐熱性、高強度、化学的耐性といった特性を備え、半導体をはじめとする幅広い産業で使用されている。特に、高耐熱性・高純度・高絶縁性・高耐圧性が求められる製造プロセス・デバイスでは、不可欠な素材となっている。 その中でも、厚さが数マイクロメートルから数十マイクロメートルの極めて薄い板ガラス(「薄板ガラス」)は、さまざまな分野で優れた特性を発揮する。例えば、ディスプレイやタッチカバーにおいては高い耐久性と軽量性を実現し、指紋センサーでは高い誘電率により感度が向上する。さらに、カメラモジュールカバーでは高い光透過率によって画像品質が向上し、ICパッケージでは高帯域での低誘電損失が可能となる。また、薄膜バッテリーでは化学的安定性と高温耐性を備え、より信頼性の高い電池技術が実現される。 図1. 超薄板ガラスは通常ガラスの特性を有する上に、応用可能な領域はさらに広い。 これらの特性から、薄板ガラスは次世代技術開発において不可欠な素材とされ、近年では折りたたみスマートフォンのディスプレイカバーやガラスインターポーザ[1, 2]などに採用されるなど、その実用性がさらに拡大している。 - 62 -フェムト秒レーザーを用いた超薄板ガラスの ナノスケール加工とその応用

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