*1光射〔造語〕 レーザー(光)プロセッシング(照射)で明るい(光輝く)未来を拓く(射止める)*理化学研究所 グループディレクター 分子科学研究所 特任教授公益財団法人天田財団(内閣府より2011年に公益認定)は、株式会社アマダの創業者である天田勇氏の寄附を基に1987年に設立の財団法人天田金属加工機械技術振興財団に遡ります。まずは金属等の塑性加工分野における機械・加工システム技術に関する研究開発助成事業とその普及啓発事業から始まり、2007年より助成分野をレーザプロセッシングへと拡大し時代の変化をキャッチアップしながら現在に至っています。そして2025年度のレーザプロセッシング分野の助成公募では、高密度エネルギー下での諸特性を利用した加工(以下「レーザプロセッシング分野、又はレーザ加工」)に必要な技術(加工に間接的に影響を及ぼす技術、センシング、IoT、AI、CPS、計測、さらには半導体等も含む)の研究・調査を助成するものとし、特に重点研究開発助成の課題研究に関し以下の様に設定しました。1. プロセッシング用レーザ装置(波長変換などを含む)の開発2. レーザプロセッシング・システムの高度化・高性能化 (集光光学系、ビーム走査・制御デバイス、安全技術の開発、IoT/AI技術の導入)3. レーザプロセッシング現象の解明と新奇プロセッシングへの応用4. レーザプロセッシング過程のシミュレーションとモニタリング(光干渉診断法、キーホール計測を含む)5. 半導体レーザによる金属の直接加工6. 異種材料のレーザ溶接・接合7. レーザによる3次元積層造形法の開発とプロセスの解明・評価8. レーザによる材料表面の改質・表面構造付与・表面除去加工9. 高強度ピコ秒・フェムト秒レーザプロセッシングの産業化応用技術10. レーザプロセッシングの医療応用(レーザ治療は除く)ただ、レーザプロセッシングは半導体の製造・加工と一線を画すもので助成対象外と考えてきました。しかし、三次元化、接合、剥離、リフトオフなど多様化する半導体加工の環境は、熱加工から非熱加工、そして衝撃波を用いた表面改質、塑性加工など、天田財団が今後重要とする助成領域と重なりつつあり状況が変わってきました。そこで、本特集ではレーザが関わる加工分野の拡がりを反映し「新しい半導体レーザ加工の可能性」と踏み込こんだ議論を行うことにしました。以前に執筆させていただきました説苑では1990年代頃に起きた固体レーザの革新、すなわち半導体レーザー(LD, Laser Diode)励起の提案により固体レーザの小型高効率化が進みレーザプロセッシングにも大きな影響を及ぼした事を解説いたしました。ただ小型高効率化以上に高密度励起が可能になったことから実用的レーザに不向きとされたYb系レーザの室温高効率発振が可能となり、Nd系を中心としたロッド型レーザから、その媒質を伸長したファイバー型や、押し潰した薄ディスク型とすることで固体レーザのパラダイムシフトが起こり現在に至った事を概説いたしました。そしてこれらの固体レーザパラダイムシフトは「レーザプロセッシングの深化」を促し、現代社会に重要な高密度実装半導体、有機IoTデバイスにおける微細加工(微細パターン形成や高アスペクト比の微細穴加工)、有機材料(有機半導体、有機EL)の非熱加工、さらには衝撃波によるリフトオフ(剥離)など付加価値の高い半導体プロセスを可能にしつつあるかなと。改めて技術革新は、技術格差を引き起こし、そこに新たなビジネスチャンスを創ることができることを確信しつつあります。さて、天田財団の研究開発助成の成果は、毎年、助成終了後に「天田財団助成研究成果報告書」として出版されています。Vol. 23(2010年発刊)からVol. 36(2023年発刊)までの14年間に掲載されました330件のレーザプロセッシング分野の助成研究成果報告書から選定し、それらの成果と共に最新の情報と合わせて『FORM TECH REVIEW』への論- 59 -光射*1平等 拓範*T. Taira― 新しい半導体レーザ加工の可能性 ―【レーザプロセッシングの半導体分野への応用】
元のページ ../index.html#61