FORM TECH REVIEW_vol33
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4.金属ガラス薄帯を用いた異種金属抵抗溶接 現在,我々のグループでは,接合界面がアモルファス化Zr板材はA5052と比べて十分高強度で高融点であるため,異種金属の摩擦攪拌接合とは異なり,Zr板側は塑性流動加工されていない.Zr板材/A5052箔材の接合界面断面を透過電子顕微鏡で観察したところ,界面がアモルファス化し,また,Zr板材も界面近傍でナノ結晶化していた. 高い継手強度を示す異種金属接合界面ではアモルファス化やナノ結晶化がしばしば報告されている[7-10].そして,アモルファス化はメカニカルアロイングで生じる場合を除けば,合金液体が急冷されて生じることが多いことが知られている.これらの報告から,Zr板材/A5052箔材の接合界面において局所溶解・急冷が生じたと考えられる. あるいはナノ結晶化すると高い継手強度を発揮する現象に着目し,異種金属接合に金属ガラスを利用する研究を行っている. 金属ガラスとは,ガラス転移を生じるアモルファス合金のことである.加熱・冷却によってガラス固体と過冷却液体の状態を可逆的に行き来する.中でも,Zr基金属ガラスには安定した高い過冷却能を有するものがある[11]. そこで,CP-Ti板材とSUS304板材を重ねて抵抗溶接する際に,Zr基金属ガラス薄帯を間に配置すると,継手強度の再現性が高くなることを見いだした[12]. 溶接による通電加熱によって,比抵抗率が結晶金属よりも高い金属ガラス薄帯が優先的に加熱されてガラス転移を生じ,過冷却液体に変化する.低粘性の過冷却液体は電極荷重によって押しつぶされてCP-Ti板材とSUS304板材の隙間を満たして最小限の量だけが接合部に残留し,同時に,過剰な過冷却液体は電極荷重によって接合部から排出される.金属ガラスの過冷却液体はCP-Ti板材とSUS304板材の隙間を原子レベルで密着させるので接触抵抗が急激に低下し,自然に通電加熱が終了し,接合部が急冷される.このとき,本来なら試料毎に異なる接合条件が統一されるため,継手強度の再現性・信頼性が向上すると考えられる. 同じメカニズムを他の異種金属接合でも生じさせることができれば,どんな異種金属の組み合わせでも金属ガラス薄帯を間に配置すれば優れた継手強度を発揮する接合が実現できると考え,アルミニウム合金や銅合金の異種金属接合を試みている. これまでのところ,C1020とSUS304の接合では金属ガラス薄帯を用いるメリットはないが,A1050とSUS304の接合では,金属ガラス薄帯を接合部に配置した方が継手強度の再現性が高いことがわかった.この結果も,接合母材よりも金属ガラス薄帯が早く加熱されて過冷却液体にガラス転移し,電極荷重により母材間の隙間を充填した過冷却液体だけが接合部に残留して接合部を急冷すると共に,接合条件が統一されることが原因であると考えられる. 図6 CP-Ti板/SUS304板の重ね抵抗溶接において接合部に配置したZr基金属ガラス薄帯のガラス転移に伴う変化の模式図. 図7 A1050板/SUS304板の突合せ抵抗溶接の継手強度. - 55 -

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