FORM TECH REVIEW_vol33
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2. Ti-Ni粉末分散アルミニウムの鍛造による微粒子生成 3. 異種金属接合界面のアモルファス化・ナノ結晶化 工業用純アルミニウムA1050板材の間にTi-Niアトマイズ粉末を配置し,A1050板材のみを溶解させてTi-Niアトマイズ粉末を内包するA1050インゴットを作製した.これをハンマーで鍛造,あるいは,圧延したところ,残念ながら当初想定していたTi-Ni粒子ではなかったが,高密度のサブミクロンサイズのAl9FeNi粒子がA1050母材中に分散することを明らかにした[2]. 当初は,サイズの大きなTi-Niガスアトマイズ粉末が塑性加工によってA1050中でメゾスケールのTi-Ni粒子に細かくなることを期待していた.ところが実際には,塑性加工によって外部から与えられるエネルギーによって,A1050とTi-Niアトマイズ粉末の界面で混合熱の発生による局所溶解が生じ,不純物のFeと共にAl-Al9FeNi擬二元系の共晶組織としてAl9FeNi粒子が生じた.この結果は,異なる2種類の金属を接触させて塑性変形を行うと,特に混合エントロピーが負でその絶対値が大きい組み合わせの場合[3, 4]に,その界面で局所溶解が容易に生じることを示唆している. 異種金属界面に外部からエネルギーを加えると界面が局所溶解する現象は,様々な加工プロセスにおいても生じていると考えられる.例えば,2種類以上の金属粉末のメカニカルアロイングを続けると金属間化合物生成とアモルファス化を繰り返す現象を始め,異種金属接合界面がナノ結晶化あるいはアモルファス化する現象などである. その一例として,A5052箔材とZr板材の摩擦攪拌拡散接合による接合界面のアモルファス化ナノ結晶化を紹介する[5, 6].Zr板材の上にA5052箔材を配置し,A5052箔材側から高速回転するツールで摩擦するとZr板材とA5052箔材が良好な継手強度で接合される.このとき,ツールの押し込み量はA5052箔材の厚さ以下に維持しツールがZr板材を攪拌しないようにした. 図3 鍛造により多数の微粒子が生成したアルミニウム インゴットの内部組織. 図4 (a) Zr板材とA5052アルミニウム箔の摩擦攪拌拡散接合実験の模式図ならびに(b) 利用したツール[5, 6]. 図5 摩擦攪拌拡散接合によるZr板材/A5052アルミ箔材の接合界面の透過電子顕微鏡観察結果.(a) 観察用試料,(b) 低倍率の明視野像, (c, d, e) (b)中のA, B, Cの領域の制限視野回折図形, (f) (b)中の矢印で示す界面の高分解能像[5, 6]. - 54 -

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