FORM TECH REVIEW_vol33
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⁻¹⁻⁻₂ 図9. Ti–40at%Al合金多結晶を1473 Kにてひずみ速度ε=1 sにてε= 0.7まで変形した試料内部の転位組織.(a) 広域の明視野像, (b,c) gg=0002, (d,e) gg=22 ̄40, (b,d) 明視野像, (c,e) 暗視野像. [D.X. Wei et al. Acta Materialia 125 (2017) 81-97] 9) した.このことから,高ひずみ速度での変形においては,通常の動的再結晶発現による結晶粒微細化の傾向とは異なり,変形双晶の形成が結晶粒微細化の主要な機構として寄与していることが明らかとなった. 変形後の内部組織を TEM にて観察したところ,図 9 に示すように,高密度の転位が存在していることが確認された.このことから,微細結晶粒は変形中に形成されたものであり,形成後もさらなるひずみが導入されていることが示唆された.また,転位の成分を同定するため,回折条件を変えて観察を行った結果,本合金中で最も活動しやすい転位である Burgers ベクトル bb=1/3<11 ̄20> の a 転位 が高密度に存在することに加え,通常の変形では活動しにくいbb=[0001]の c転位も多量に導入されていることが認められた. 3.2 高温変形後の時効熱処理による層状組織形成 上述のように,Ti-40at.%Al 合金バルク材を,α 相単相領域となる 1473 K においてε=1 s¹の高ひずみ速度で ε = 0.7 まで変形させることで,微細結晶粒化と高密度の転 + γ 二相組織位導入に成功した.このバルク材に対し,αが得られる温度範囲で時効熱処理を施した.例えば,1073 K で 2 ks の時効処理後(図 10a, b)には,α 相の粒界に配向した結晶粒は,変形前から存在した結晶粒が底面すべりに支配された変形にともなう結晶回転で形成されたものであり,微細な結晶粒は動的再結晶により生成した結晶粒に塑性ひずみが導入されたものと推定される. ひずみ速度の増大に連れて,[0001]配向した粗大結晶粒部分の割合が減少し,動的再結晶あるいは変形後の静的再結晶した領域の割合が増し,ε = 1 s¹の場合にはほぼ全面が,配向が弱く(図6d)ひずみの少ない(KAM値の低い(図 7d))平均粒径5 µm以下の微細粒で覆われた. 高ひずみ速度での変形において顕著に観察された降伏点降下現象の原因を明らかにするため,降伏点降下が発現する前後のひずみ量(ε)まで変形を中止し,EBSD により組織観察を行った.その結果を図 8 に示す.降伏点に達する前の ε = 0.012(図 8a)の時点から,白矢印で示すように微小な伸張した結晶粒が現れ始め,降伏点に達する直前の領域では,それらの伸張した結晶粒が各結晶粒内に多数形成されていることが確認された.伸張した結晶粒は,元々存在していた結晶粒と方位関係を有しており,一つの結晶粒から発生する結晶粒は,1 あるいは 2 種類の方位を有していた. 方位差および晶癖面の幾何学的考察により,伸張した結晶粒は, K1: {11 ̄21}, K2: {11 ̄2 ̄2}, η1: {11 ̄2 ̄6}, η2: {11 ̄23 }, s = 0.232 で表される双晶要素を有する変形双晶であることが判明図8. Ti–40at%Al合金多結晶を1200℃にてひずみ速度にて,降伏点降下現象発現前後の種々のひε=1 s¹にまで変形して得られた組織のEBSD-ずみ量⁻IPF方位マップ.(a) ε= 0.012, (b) ε= 0.032, (c) ε= 0.062, (d) ε= 0.194. [D.X. Wei et al. J. Alloys Comp. 693 (2017) 1261-1276.] 8) (ε)- 48 -

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