FORM TECH REVIEW_vol33
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衡となる500 ℃から900 ℃の各温度で,種々の時間時効熱処理を施した.熱処理によって得られた組織をSEM-EBSDならびにTEMにて観察評価した. 図4 (a) Ti–40at%Al合金多結晶材の熱間鍛造実験の温度及び加工履歴,(b) Ti-Al2元系平衡状態図に示した合金組成と熱処理温度.[ D.X. Wei et al. / Materials and Design 98 (2016) 1–11.] 7) 2.3 選択溶解 2.2節に記した手法で得られる組織に対して,0.5M NaCl水溶液中での選択溶解処理を施し,Al-rich なγ-TiAl相を除去し,ナノラメラ多孔体を得る.さらに硫酸アンモニウム水溶液中にて陽極酸化を施すことで,酸化皮膜で覆われたナノラメラ多孔体を得た.酸化皮膜の化学組成をX線光電子分光(XPS)により評価した. 2.4 ナノ塑性加工 2.1節に記した熱間鍛造によるひずみを導入する手法では,試料全体に塑性ひずみが導入され,その一部が再結晶を発現するので,ひずみの分布は偶発的なものとなる.そのため,ラメラの分布も偶発的なものとなる.熱間鍛造による塑性変形の代わりに,局所的にナノスケールで塑性ひずみを導入することによる,ラメラ分布の人為的な制御を試みた.具体的には,溶体化されたAl過飽和なα2単相組成のTi-Al合金単結晶に,ナノインデンテーション,ナノインプリント,ダイヤモンドナイフウェッジによる塑性加工を施し,その後にγ-TiAl相が析出する温度で時効熱処理することにより,塑性ひずみを導入した箇所に優先的にγ相を核生成・成長させることを試みた. 2.方法 ナノラメラ多孔体を製造する.得られた多孔体に陽極酸化を施すことで酸化皮膜を生成させる.得られる構造のキャパシタンスを評価し,熱間鍛造で得られる層状組織のラメラーコロニーサイズならびに層間隔との関係を解明する. 2.1 熱間加工再現試験 本研究では,熱間加工と組織の関係を明らかにするため,コールドクルーシブル誘導加熱溶解法により作製したTi-40at%Al合金を用いた熱間加工再現試験を実施した.試験片として,直径8 mm,高さ12 mmの円柱状サンプルを母材から切り出した. 図3に,熱間加工前の溶製材の組織を示す.これは走査電子顕微鏡後方散乱電子回折(SEM-EBSD)を用いて解析したものである.試験片に対し,溶体化熱処理および熱間加工を実施した.これらの処理条件を図4aに示す. 熱間加工再現試験は,熱間鍛造試験装置(富士電波工機 サーメックマスターZ)を用いて行った.試験温度は1000℃から1200℃の範囲で50℃刻みとし,ひずみ速度は¹の範囲で変化させた.加工後の組織解1×10析は,動的再結晶発現による結晶粒微細化ならびに結晶粒内部への転位組織の形成に着目し,SEM-EBSDおよび透過電子顕微鏡(TEM)を用いて行った. 本試験の結果をもとに,均一な微細結晶が形成され,か〜1×10² s⁻⁵⁻⁻ つ結晶粒内部に層状組織形成の基点となる転位が高密度に導入される熱間鍛造条件を特定した.さらに,その挙動について結晶塑性理論に基づく考察を行った. 図3 Ti–40at%Al合金多結晶鋳造まま材のIPF方位マップ.[ D.X. Wei et al. / Materials and Design 98 (2016) 1–11. ] 7) 2.2 二相化時効熱処理 2.1節に記した熱間加工で得られる材料組織は,hcp基の規則構造であるD019型規則構造を有するα2相,あるいは,α2-Ti3Al母相に少量のγ-TiAl相が析出した二相組織になっている.図4bに示す平衡状態図上でα2+γ二相平 - 46 -

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