FORM TECH REVIEW_vol33
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₀₂₃⁻₂₃ReviewTi-Al合金のナノ塑性加工および熱間鍛造による層状組織制御と選択溶解を用いたナノ多孔体創製小泉 雄一郎*, 魏 代修, 加藤 秀実, 吉見 享祐,西山 宏昭, 山中 晃徳, 吉野 雅彦, 千葉 晶彦Y. Koizumi*大阪大学 教授 ³). ₁₉図1. 層状Ti-Al合金の構成相の結晶構造. (a) γ-TiAl相 (fcc基L10型構造), (b) α2-Ti3Al相 (hcp基D019型構造). 図2. 層状Ti-Al合金の層界面に平行な結晶面の原子配列.(a) γ-TiAl相の{111}面, (b) α2-Ti3Al相の(0001)面. 組織の関係を系統的かつ定量的に評価する必要がある1). そこで本研究では,以下の調査を行うことを目的とした. (1) ナノラメラ多孔体化後の比表面積最大化を目指して,Al相との体積比が1対1となる組成Ti-γ-TiAl相とα40at%Alの合金に対して,種々の温度・ひずみ速度で熱間鍛造を施し,加工条件と得られる組織の関係について,結晶粒(ラメラーコロニー)サイズ,層間隔及びそれらの均一性を調べるとともに,その後の熱処理による組織の変化を系統的に調査し,最適条件を明らかにする. (2) さらに,均一微細な層状組織が得られる条件で熱間鍛造と熱処理を施して,種々に組織制御した層状Ti-Al合金に対して,NaCl水溶液中で電位を印加し,選択溶解にてAl-richなTiAl相を除去し,種々の幅の板状ポアから成る-Ti吉野 雅彦, 土谷 博昭, 藤本 愼司, 千葉 晶彦 小泉 雄一郎, 魏 代修, 西山 宏昭, 山中 晃徳 ででくくだだささいい -Tiとで高強度を発現する.このため,層状組織の制御に関する研究が広く行われてきた.一般に,構造材料としての合金が安定した材料特性を示すためには,組織の均一微細化が不可欠であり,熱間鍛造はそのための代表的な手法の一つである.TiAl 合金においても熱間鍛造を利用した組織制御が検討されており¹),特に層状 TiAl 合金では,塑性加工による結晶粒微細化に加え,転位導入を通じて時効熱処理後に形成される層状組織の微細化にも寄与することが明らかになっている¹ 一方,層状Ti-Al合金に食塩水中で1 V程度の電位を印加すると,γ-TiAl相の層のみが選択的に溶解され,層状の多孔体が得られることを示してきた4).さらに,耐食性研究の中で,硫酸アンモニウム水溶液中で0.5 V程度の電位印加で陽極酸化が生じTiとAlの複合酸化膜が形成されることもこれまでの研究の中で見出してきた5,6).この複合酸化膜形成が高誘電率を示すと期待され,ラメラ多孔体化による比表面積増大と組み合わせればキャパシター等,構造材料以外の新たな用途が開拓できると期待される. γ相の核生成の起点となる転位が存在する状態にて熱処理を施せば,ラメラ間隔が10 nmオーダーとなる超微細な層状組織の形成も可能である.従って,上記の熱間鍛造を動的再結晶が発現する条件で行い,適度な転位密度を有する微細結晶粒を造り込み,その後に層状組織化のための熱処理を施せば,これまでよりもさらに微細な層状組織を得ることができると期待される.そのような組織に対して選択溶解プロセスを施し,それにより得られる層状多孔体に陽極酸化を施すことにより,さらに高い比表面積と高い酸化皮膜の誘電率との相乗効果が発現することが期待される.しかしながら,Ti-Al合金の熱間鍛造は困難で,加工条件によっては亀裂の発生が問題となる.また亀裂が発生しない場合であっても,結晶粒や層状組織が不均一となるなどの問題が懸念される.結晶粒と層状組織を均一に微細化するには,熱間加工条件と熱処理条件と形成される写写真真位位置置 削削除除ししなないい1.緒言 軽量耐熱材料としての実用化が進む Ti-Al 合金は,図 1 に示すように,面心立方(fcc)基の L1 型規則構造を有する γ-TiAl 相と,六方最密(hcp)基の D0 型規則Al 相が,互いの最密面および最密方構造を有する α向を共有しつつ積層した層状(ラメラ)組織を形成するこ- 45 -層状組織制御と選択溶解を用いたナノ多孔体創製 Ti-Al合金のナノ塑性加工および熱間鍛造による

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