FORM TECH REVIEW_vol33
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𝐾𝐾�𝜎𝜎���� 1𝜋𝜋 多軸鍛造材(1~3パス材)の衝撃値 (4) での衝撃値が最も低くなる結果を得た.極低温の衝撃値は室温に比べて56%低下した.この点はMg合金のintrinsicな性質であると考えられる.逆に室温以上の高温域では基本的にヤング率および降伏応力が低下し,かつ延性が向上するため,切欠き先端付近での塑性域が拡大するために衝撃値が向上したと考えられる.三浦ら24)は多軸鍛造を施したAZ80Mg合金の衝撃値に関して本研究と同様な結果を報告している.また須藤ら25)は純Mgのナノインデンテーション評価を行い,粒界近傍の塑性硬さは粒内のそれより14%高いことを報告している.今回,多軸鍛造を施したサンプルのいずれの試験温度での破面からは,粒界をき裂経路とする様子が観察された.したがってMg合金は,粒界近傍に高ひずみ領域が残留しており,それをトレースするようなき裂伝播プロセスが生じた可能性は否定できない.今後,より詳細な調査が必要である.いずれにしてもMg合金に関して,極低温下で構造材に適用するためには,低い衝撃値を克服する必要がある.ところで本研究では423Kの高温度までの衝撃試験を行ったが,炭素鋼で観察される延性-脆性遷移挙動は現れなかった. 3.5 破壊挙動観察 図15は,AZ31Mg合金の初期材および多軸鍛造材の室温下で実施した引張試験後の破面観察結果である.破面観 図12 室温下でのAZ31Mg合金初期材および多軸鍛造材における静的三点曲げ荷重-変位曲線 図13 極低温下でのAZ31Mg合金初期材および多軸鍛造材における静的三点曲げ荷重-変位曲線 図14 各試験温度におけるAZ31Mg合金初期材および図15 室温下でのAZ31Mg合金初期材および多軸鍛造材の引張破面観察結果 察方向は引張負荷方向と一致させて観察した.同図(a)は初期材の破面であり,大小様々なディンプルと,矢印で示察方向は引張負荷方向と一致させて観察した.同図(a)は初期材の破面であり,大小様々なディンプルと,矢印で示した部分では,へき開破壊と考えられる金属結晶学的な状態を反映させた鋭いき裂が紙面に対してやや垂直な方向に深くまで生成しているのが観察された.図8の結果から,多軸鍛造を一回実施した累積ひずみ = 0.8(1パス)の場合,初期材よりも降伏応力が低下したが,破断ひずみは0.344であり初期材の1.3倍になった.これは初期材の加工集合組織が多軸鍛造によって破壊され,図7(b)に認められるような結晶成長方位がランダムに配列した動的再結晶粒が多数形成し,それらが低い転位密度であるが故に降伏応力の低下と破断ひずみの増加につながったと考えられる.脆性挙動を呈さず早期破壊を及ぼさない材料に対して,平面ひずみ下における塑性域寸法w26)は以下の式(4)で表される. ��ここでKIはモードIの開口き裂モードにおける応力拡大- 42 -

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