FORM TECH REVIEW_vol33
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3.実験結果および考察 3.1 ミクロ組織観察結果 図6 落錘式衝撃試験機(模式図)とクライオスタット 図7は初期材(熱間押出材)および多軸鍛造を施したAZ31Mg合金のミクロ組織観察結果および平均結晶粒径を示したものである.なお,(e)および(f)は走査電顕および透過電顕を用いて観察した結果である.結晶粒は多軸鍛造のパス数が増えるにつれて微細化した.またマイクロビッカース硬さ(3.75N,15秒)を測定した結果,多軸鍛造のパス数が増えると硬度が向上した. 3.2 引張試験による応力-ひずみ曲線 図8は,AZ31Mg合金初期材および多軸鍛造材の室温下での引張応力-ひずみ曲線である.初期材は,降伏応力(平均値)が206MPa,破断ひずみ(平均値)が0.258であり,いわゆる弾完全塑性体14)の応力ひずみ応答を示した.多軸 図7 AZ31Mg合金初期材(熱間押出材)および 各パスの多軸鍛造材のミクロ組織 鍛造を1パス実施したときの応力ひずみ応答は,初期材のそれと比較して大きく変化した.降伏応力は顕著に低下し,加工硬化による塑性変形が顕著に現れた応答となった.その後累積ひずみの増加と共に降伏応力が増加し, = 3.2(4パス)のところで,初期材よりも降伏応力が若干低くなるものの,引張強さおよび破断ひずみが向上した.しかしながら累積ひずみ = 4.0(5パス)では初期材に比べ降伏応力と引張強さが向上するものの,破断ひずみが大幅に低下する結果となった. ところで初期材から1パスの多軸鍛造を行った場合に,降伏応力が大幅に低下したが,これは初期材の加工集合組織(熱間押出)が多軸鍛造によってスクラップされた影響の結果であると考えられる.その後のパス数の増加に伴う降伏応力および延性の増大は,多軸鍛造による累積ひずみの増加による結晶粒微細化や転位密度の増加がなされた総合的な効果と考えられる.三浦ら15)は,AZ61Mg合金に降温多軸鍛造処理を施した場合,高累積ひずみ = 7.2では顕著な延性値のひずみ速度依存性が現れ,高ひずみ速度になるほど延性が低下すると報告している.小林16),17),18)は長年にわたる材料の機械的性質や破壊に関する研究に基づき,材料強度はひずみ速度や切欠き効果に強く依存することを述べており,これらの効果に関する考察実験は今後の課題としたい. 図8 室温下でのAZ31Mg合金初期材および多軸鍛造材の引張応力-ひずみ曲線 図9 極低温下でのAZ31Mg合金初期材および多軸鍛造材の引張応力-ひずみ曲線 - 40 -

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