FORM TECH REVIEW_vol33
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℃Report超微細粒鋼のせん断加工面の特徴鳥塚 史郎*S. Torizuka*兵庫県立大学 教授 図2 超微細粒材と粗粒材の組織 2.実験方法 鳥塚 史郎 ででくくだだささいい 超微細粒鋼は,マルテンサイトやベイナイトに比較して,強度-絞りバランスに優れ,超微細粒鋼線材は高強度の非調質冷間圧造用鋼として,高い可能性を持つことを報告してきた1-6).一方,超微細粒鋼が,成形性の優れた高強度薄板として提供できれば,プレス加工で製造する精密部品分野への適用が可能となる.しかし,プレス加工特性についての研究に関しては,サブミクロン組織をもった薄板の製造の困難性から,報告例は少ない.精密部品のプレス加工には,素材の切断や穴あけなどせん断加工による成形が欠かせない. 図1 せん断面の特徴7) 図13)に示すように,せん断加工面は,だれ,せん断面,破断面,かえりからなるが,結晶粒径の影響は明らかではない.微細粒鋼の特徴である加工硬化が小さい,絞りが大きいという特性はせん断加工面に大きな影響を与えると考えられる.超微細粒鋼のせん断加工面の特徴を明らかにするために,サブミクロン結晶粒径の低炭素フェライト鋼,比較のため,10ミクロンの低炭素フェライト鋼,また,写写真真位位置置 削削除除ししなないい1.まえがき 0.3%Cのフェライト+パーライト鋼を用いて,穴あけ加工を行い,そのせん断面の特徴を解析した8). 0.002%および0.02%C-0.3%Mn-0.2%Siの組成の超微細粒鋼を温間溝ロール圧延法(18mm角の棒材)によって作製した.低炭素組成としたのは,フェライト単相組織とするためである.この18mm角の棒材の一部を650で熱処理を行い,粗大粒組織棒材も作製した1).また,比較のため,0.3%C-1.5Mn-0.3Si組成のフェライト+パーライト組織鋼を熱間圧延によって作製した. 図2に微細粒材と粗粒材の組織写真を示すが,結晶粒径はそれぞれ,0.7m,13mであった.セメンタイトは見いだされなかった.0.30C鋼はフェライト粒径約20mで,第2相はパーライトであった. 図3に棒材の引張試験結果を示す.0.02C粗粒材は伸びが50%で引張強さが330MPaであった.0.3Cフェライト+パーライト組織は,降伏強度400MPa,引張強さ630MPaで,大きな加工硬化をもつ.一方,0.02C微細粒材は降伏強度700MPaと粗粒材の3倍になったが,降伏後全く一様伸びを持たずに破断した.0.002C超微細粒材は,伸びが20%程度あった. 次に,18mm角の棒材から,放電加工および表面研削によって,幅18mm,厚さ1mmの薄板形状のサンプルを作- 33 -超微細粒鋼のせん断加工面の特徴

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