FORM TECH REVIEW_vol33
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3.まとめ 本稿では,航空機エンジンディスク材で実用化されているTi-6246合金をモデル合金として鍛造過程における塑性流動特性および組織変化(ここではα相の動的球状化現象に着眼)の加工条件(加工温度,ひずみ速度,ひずみ量)との関係性を定量的に明らかとした(支配因子の定量化).ここでは物理モデルのみならず機械学習も援用して回帰を実施し,支配因子について明らかとした. 2004. 3) H. Matsumoto, ISIJ Int., 61 (2021) 1011-1021. 4) Y. Li, E. Onodera, H. Matsumoto, Y. Koizumi, S. Yu and A. Chiba: ISIJ Int., 51 (2011), 782. 5) S.Raschka, and V. Mirjalili: Python Machine Learning: Machine Learning and Deep Learning with Python, scikit-learn, and TensorFlow 2 (Third edition), Published by Packt Publishing Ltd. 2019. 表1 各クラスター(Gr.1,2,3)でのNN重要度解析結果 ー毎(加工条件を3つのクラスターに大別)で再度,JMAK則およびNNで計算・回帰を実施した.代表的に図8はGr.1の加工条件でのみJMAK計算およびNNした実験値と計算値の関係性を示している.これより両者の計算結果で良い相関性が観察され,明らかに図6で示した全データの相関性と比較しても著しく相関性が改善されていることがわかる.加えて,ここでは図示していないがWard法で区分けされたクラスター 2, 3の加工条件においても同様に良い相関性が確認されている.すなわち,加工条件・加工組織に依存して(図7の区分けの通り)動的球状化を支配する作用機構が異なり,そのために図6で示した通り,全加工条件を包括的に計算・回帰した場合では低い相関性を示したものと推察される(すなわち全加工条件で動的再結晶の支配的な作用機構は同一ではないことを意味している).次にそれぞれのクラスター毎で動的球状化に及ぼす加工条件の影響度を定量解析した.表1は各クラスターでNNを実施した際の重要度解析を実施した結果である.ここでは数値が高い方が動的再結晶化に寄与する影響度が高いことを示しており,興味深いことに各加工条件域(クラスター毎)で影響度合いが異なることに気付く.すなわち動的球状化に及ぼす支配因子として熱活性過程の影響が弱いGr. 3の条件では温度およびひずみ速度が強く影響し,他方で熱活性化過程が強いGr. 1の条件ではひずみ量が影響因子として強く作用する.逆にGr. 2の加工条件ではひずみ速度が影響因子として強い影響を及ぼす.このように,機械学習を適切に援用する事で加工条件毎にて作用する現象論の支配因子を区分けする事が可能であり,それぞれの条件で動的球状化の現象論を解明・深化する上で極めて有用な情報となる. 謝 辞 本研究は,公益財団法人天田財団からの一般研究助成(AF-2018026)により実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします. 参考文献 1) P. Gao, M. Fu, M. Zhan, Z. Lei and Y. Li, J. Mater. Sci. Tech., 39, (2020), 56-73. 2) F. Humphreys, and M. Hatherly: Recrystallization and Related Annealing Phenomena. Oxford: Elsevier; - 32 -

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