Report航空機エンジン用Ti-6246合金の革新的な鍛造プロセス・組織制御を実現するための組織予測モデルの基盤構築松本 洋明*H. Matsumoto*香川大学 教授 図1 鍛造加工スケジュール 松本 洋明 ででくくだだささいい の鍛造での成形加工が施される.この組織制御の過程において高い室温強度・疲労特性を要求する部材では等軸組織をベースとした組織制御が施され,とりわけβ加工されたラメラ組織から如何に加工過程で均質な粒状(等軸)組織が得られるかが重要となる(α相の動的球状化の促進化).本レポートではこのラメラ形態から等軸形態に組織変化させる作用機構(動的球状化機構)について着眼する.例えば,Gaoらの総説1)を参照・概説すると,ラメラ組織の(α+β)域での塑性加工過程にてラメラが捩じれるキンキングが起き,それを起点として粒の分断・球状化が活性化・促進される.加工でのひずみ量の増加とともにこのキンク部の転位壁を起点としてα粒は分離(スプリット)する現象,もしくはこの転位壁より溶質元素が優先的に拡散して形態として丸みを帯びて分断・球状化される現象がある.Ti合金の高温加工・組織変化において,本合金は積層欠陥エネルギーが高く,そのために加工過程で新粒が形成する動的再結晶現象においては連続型(転位網の形成・サブグレンがひずみ量に対して連続的に回転して新粒を生成)で進行するのが一般である2).いずれにせよ,Ti合金の鋳塊およびラメラ形態を呈すビレットから段階的な熱間加工過程にて均質な(α+β)等軸組織を得るためには,いかに動的球状化,もしくは連続型の動的再結晶が活性化・促進されるかが重要であり,これを実現するための加工条件(鍛造条件)の最適化が重要となる. 本レポートでは,航空機エンジンに既に使用されている写写真真位位置置 削削除除ししなないい1.まえがき チタン(Ti)合金は軽量で,良好な耐食性,室温強度および高温強度を呈す事から航空機用を中心に実用展開されている.その製造工程では主に熱間加工(700℃~1100℃)で素形材が製造され,用途に応じて適切に加工・熱処理を介し各種での組織制御が施される.Ti合金における鍛造品(例えば航空機エンジン用ディスク・ブレード部品)の一般的な製造工程について,溶製された鋳塊の初めの塑性加工過程では均質化を目的に高温(一般には1000℃以上)でのベータ(β, BCC)鍛造でブレークダウンし,その後に組織形態の制御を目的に分塊鍛造過程で等軸状の組織制御では(α+β)2相域の温度で,他方で(α+β)相でのラメラ形態の制御ではβ相域の加工温度で鍛造加工が実施されビレットを製造する.その後,同様に条件を最適化して製品形状へ2.結果および考察 2.1 恒温鍛造と組織(実験) 図1は本研究でのモデル合金であるTi-6246合金のラメラ出発組織を形成するための熱処理条件,および鍛造(圧縮)試験の条件を図示している.加えて熱処理で形成したラメラ組織も示している.この(α+β)ラメラ組織を出発組織として多様な条件で鍛造加工を実施し,塑性特性および加工組織(特にα相の動的球状化現象に着眼)を高精度に予測する基盤技術に着目した.図2では750℃,850℃の試験温度,10-3s-1, 1s-1のひずみ速度で試験した真ひずみー真応力曲線をまとめている.塑性流動の実線部が実験結果でTi-6Al-2Sn-4Zr-6Mo(Ti-6246)合金をモデル合金として高温加工過程における塑性流動特性およびα相の動的球状化現象を対象とした加工条件と現象論の関係性について体系化,またこの連関的な支配因子について物理モデルと併せて機械学習を援用して明らかとすることを目的とする.また,本稿で紹介する内容は天田財団研究助成の成果(AF-2018026-B3「航空機エンジン用Ti-6246合金の革新的な鍛造プロセス・組織制御を実現するための組織予測モデルの基盤構築 -実験・計算の両面から-」)でもあり,加えて詳細は学術論文3) でも報告していることから,より詳細な内容ではそちらも併せて参照頂きたい. 破線部がそれを摩擦・温度補正4)した曲線である.これより高速変形ではピーク応力に達した後の加工軟化域が大きく,温度補正の結果,応力値が高くなっていることからも加工発熱の影響が強く,それに伴い不均一変形が支配的- 28 -航空機エンジン用Ti-6246合金の革新的な 鍛造プロセス・組織制御を実現するための 組織予測モデルの基盤構築
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