謝 辞 本研究は,公益財団法人天田財団からの2019年重点課参考文献 図15に,図13,14から得られる通常疲労とDwell疲労寿命の比Life debit, Life debit = Nnormal/Ndwell を示す.1に近い値を示すほど,通常疲労とDwell疲労の寿命差が近いことになり,長時間一定負荷がかかるよううな運用条件でも寿命を低下させることなく安全に使用できるとされている. Life debitは,1000℃鍛造900℃熱処理材で大きいが,それ以外の条件では10以下であった.Life debitが10以下である条件を詳細に見ると,940℃鍛造900℃熱処理材が比較的大きな値を示した.Life debitを小さくするためには熱処理を1000℃にした方がいいということになる. 900℃熱処理材のLife debitが鍛造温度で大きな差があるのに対し,1000℃熱処理材では, 鍛造温度による差は小さかった.一方,ひずみ速度の影響は,0.5,0.05 /sに対してはほとんどないが,0.005 /sについては900℃,1000℃熱処理ともに増加した.85%鍛造材は熱処理による違いはほとんどなく,70%鍛造材の1000℃熱処理材と同程度のLife debitであった.Bi-modal組織で比較してもLife debitに大きな差があるため,組織による傾向は明確ではない. 900℃熱処理材では,1000℃熱処理材よりも等軸α相量が増加する傾向にあることが唯一の違いであるため,等軸α相量がDwell疲労特性の劣化に影響していることを示唆している.また,等軸α相以外の組織がbi-modal組織では層状組織,β相球状化組織では層状組織が分断された球状化組織である.900℃熱処理材のこれらの組織形態の違いがDwell fatigueに与える影響についてはより詳細な検討が必要である. 以上の結果から,鍛造,熱処理プロセスの違いによる組織形態の違いがDwell疲労特性に与えるメカニズムについてはまだ検討の余地はあるが,通常疲労とDwell疲労寿命の差を縮める鍛造・熱処理プロセスおよび組織形態については明らかにすることができた. 2.1000℃熱処理により,鍛造条件に関わらずbi-modal組織が形成された.一方,900℃熱処理により1000℃鍛造材ではbi-modal組織を形成し,940℃鍛造材ではβ相球状化組織となった.これらの違いは,鍛造温度の違いによるひずみ量とそれを熱処理により緩和できるかどうかで引き起こされることがわかった. 3.引張強度は,β相球状化組織がbi-modal組織よりも高い強度を示した.また,bi-modal組織の比較では,900℃熱処理材の強度が高く,これは残留歪み量によるものである. 4.通常疲労寿命は鍛造・熱処理プロセス,それにより得られる組織形態の違いによらず,ほぼ同程度であった.一方,Dwell 疲労については,鍛造・熱処理プロセス,組織形態の違いにより寿命が大きく変化した.通常疲労とDwell疲労の寿命比であるLife debitを小さくするためには,鍛造温度や歪み条件よりも,熱処理温度がより影響を与え,1000℃での熱処理によるbi-modal組織形成が効果的である.また,鍛造率を大きくすることで,熱処理温度の違いが小さくなり,プロセスウインドウが広がることがわかった. 題研究および2022年一般研究助成により実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします.また,本研究は物質・材料研究機構(NIMS)の1500t鍛造シミュレータを用いて行いました.鍛造実験と塑性加工シミュレーションを行なっていただいたNIMS黒田秀治氏,本橋功会氏に感謝いたします. 1) J. Qiu et al., Metall. Mater. Trans. A, 45A, (2014) 6075. 2) A. N. Stroh, Proc. R. Soc. Lond., 223 (1954), 404-414. 3)https://www.timet.com/assets/local/documents/datasheets/alphaalloys/834.pdf 図15 Life debit 4.結論 1.1500t鍛造機を用いて,鍛造温度,ひずみ速度,鍛造率を変化させ,得られる組織の違いを明らかにした.1500t鍛造機では冷却速度が遅いため,鍛造中に導入された歪みが冷却中に緩和する現象が起こることが明らかとなった. - 27 -
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