FORM TECH REVIEW_vol33
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疲労試験のデータがばらつくことを考慮に入れると,通常疲労については,鍛造温度,ひずみ速度,熱処理条件の差は小さいと言える.85%鍛造材は70%鍛造材よりも通常疲労の寿命はやや長かった.Dwell疲労寿命は一様に低下しており,特に1000℃0.005 /s 70%の条件で低下が著しかった. 次に900℃熱処理材の疲労寿命を図14に示す.900℃熱処理材は,1000℃鍛造ではbi-modal組織が,900℃鍛造ではβ相球状化組織が形成された.これらの組織の違いにも関わらず,通常疲労については104オーダーであり,1000℃鍛造材がやや寿命が長い傾向は見られたが,組織間の違いは小さかった.また,1000℃熱処理材と同程度の疲労寿命を示した.85%鍛造材の疲労寿命がやや長いのも1000℃熱処理材と同じ傾向であった.Dwell疲労の寿命は,900℃熱処理材は103オーダーであり,同じbi-modal組織で比較しても,1000℃で形成したbi-modal組織の疲労寿命(104オーダー)よりも1桁短く,900℃熱処理ではDwell 疲労の寿命が大きく低下することが示された.また,Dwell fatigueについては,組織による差が大きく,940℃で鍛造したβ相球状化組織の寿命が長く,1000℃で鍛造したbi-modal組織の寿命は短かった. じ鍛造温度,熱処理温度で比較すると,強度は鍛造歪み速度に対しては変化しなかった. 85%鍛造材は70%鍛造材よりも低い強度を示した. 図9,10に示すように900℃熱処理材の組織は,鍛造温度により異なる.1000℃鍛造材ではbi-modal組織を形成し,940℃鍛造材では層状組織内のβ相球状化組織を形成した.一方,1000℃熱処理材では,鍛造温度によらず,bi-modal組織を形成した.これらの組織形態を図12に示すと,β相球状化組織がbi-modal組織よりも強度が高いことが明らかとなった. 低い鍛造温度で導入された歪みは,加工発熱によりある程度緩和されるが,完全ではなく,900℃熱処理では歪み緩和が起こりにくいために,熱処理材にも歪みが残留すると考えられる.強度はベイリーハーシュの関係により,転位密度に依存するため,β相球状化組織で強度が高かったと考えられる.1000℃鍛造では鍛造中に歪みがある程度緩和しているため,熱処理温度に関わらず強度が低くなるが,1000℃熱処理では900℃熱処理よりも,歪み緩和が進むため,同じbi-modal組織でも,900℃熱処理材よりも強度が低くなる.しかし,熱処理温度による強度の差は,940℃鍛造材よりも小さくなる. 85%鍛造材では,加工発熱は70%鍛造材と同程度であるが,導入されるひずみ量が2倍程度ある.熱処理をしても70%鍛造材よりもひずみが残りそうであるが,転位が導入されているために,逆に熱処理中の再結晶を促進し,転位密度が下がっている可能性がある. 図12 鍛造熱処理材の0.2%耐力 3.5 1500t鍛造シミュレータ鍛造・熱処理材の疲労特性 次に,引張試験で得られた強度の0.9を最大応力とした疲労試験を行った.1000℃熱処理材について,疲労寿命を最大応力でプロットしたグラフを図13に示す.図9,10に示すように,1000℃熱処理材では,鍛造条件に関わらず,bi-modal組織を形成した.1000℃0.05/sのみ通常疲労もDwell疲労も他の鍛造材よりも寿命が短く,これについては理由が不明であるが,それ以外の鍛造材については,図13 1000℃熱処理材の疲労寿命 図14 900℃熱処理材の疲労寿命 - 26 -

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