85%鍛造材については,組織観察では70%鍛造材と同程度のひずみ量であり,観察結果と計算結果は異なるが,場所により導入ひずみが異なるため,組織観察をした場所と計算の箇所が必ずしも一致しないことによる.加工発熱量が同程度であるため,鍛造率が高いほどひずみが導入されるのは傾向としては理解できる. 3.2 1500t鍛造シミュレータ鍛造・熱処理材の組織 次に鍛造材を1000℃で熱処理した時の組織を図9に示す.1000℃鍛造材の組織はbi-modal組織であり(図4(a)),これを900,1000℃で熱処理しても組織は変化しなかった.1000℃鍛造材では,熱処理温度,ひずみ速度,鍛造率を変えても,熱処理により得られる組織は同じになることを示す. 図9 1000℃鍛造材の熱処理組織 図10 940℃鍛造材の熱処理組織 図10に940℃鍛造材の熱処理組織を示す.940℃鍛造材は層状組織が分断された組織を示しており(図4(b)),900℃で熱処理を施すと,歪み速度によらず,分断されたβ相球状化組織を形成した(図10(a), (c)).一方,1000℃で熱処理を施すと,歪み速度によらずbi-modal組織に変化した. 3.3 Microtextureの解析 熱処理によりhcp構造の(0001)面がそろった領域であるmicrotextureが生成しているかを明らかにするために,SEM-EBSDを用いて方位解析を行った.Microtextureの量を定量的に示すために,[0001]方向から10°以内に存在する結晶粒の面積率を測定し,その結果を図11に示す.(0001)面の存在は,鍛造・熱処理条件によらず10%以下であり,(0001)面が揃った集合組織を作っているとは言えなかった.85%鍛造材は, 同じひずみ速度で70%鍛造したものと比較すると,[0001]方向を向いている結晶粒の割合は1%と低かった.図8に示すように,鍛造中の加工発熱量は70%と同程度であるが,加工率が上がることで導入されるひずみ量が2倍に増加する.これが多数の核生成を引き起こし,ランダムな結晶粒が成長したと考えられる.試験した鍛造条件に対し,(0001)面の生成率はランダムであり,これらの数値の違いは,鍛造・熱処理条件によるものではなく,試験片の場所による違いであることが示唆された.実際に,1つの試料について広い領域で観察を行うと,場所による結晶方位の差が大きく,同じ試料でも[0001]方向を向いている結晶粒は,1から5%と大きく異なった. 図11 [0001]方向から10°以内に存在する結晶粒の比率 3.4 1500t鍛造シミュレータ鍛造・熱処理材の引張強度 鍛造・熱処理材について,室温で引張試験を行った.鍛造歪み速度に対する0.2%耐力を図12に示す.70%鍛造材を比較すると,熱処理温度による違いが最も明確で,黒いシンボルで示す1000℃熱処理材は900℃熱処理材よりもいずれのひずみ速度に対しても強度が低かった.1000℃熱処理材では鍛造温度の違いによる強度の差は,900℃熱処理材よりも小さかった.同じ熱処理温度で比較すると,900℃熱処理では鍛造温度が低い方が強度が高く,1000℃熱処理では鍛造温度が高い方が強度が高かった.一方,同- 25 -
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