FORM TECH REVIEW_vol33
25/108

3.結果と考察 1500t鍛造シミュレータは,最大荷重1500t,最大直径250mm程度の材料を1100℃まで鍛造可能であり,0.01〜300m/sの速度制御が可能である. 2.3 熱処理条件 1500t鍛造材のサイズは,70%鍛造でおよそ150 mm φ x 30 mm L,85%鍛造では,およそ220 mm φ x 14 mm Lの円板になった(図3).まず,鍛造材の中央から5mm幅の板を切り出し,鍛造材の組織を観察した.次に左右に残った1/2の鍛造材に対して,α相+β相2相域である900℃あるいは1000℃で2hの熱処理を行い,空冷した. 図3 (a), (c) 70%鍛造材,(c), (d) 85%鍛造材 2.4 組織および力学特性 1500t鍛造・熱処理材について,半径の1/2の位置(1/2R)近傍から14x14x90 mmの角状試験片を切り出した.70%鍛造材は直径が150 mm,板厚が30 mmであるため,1/2R近傍から厚み方向に2本の角状試験片を切断した.85%鍛造材は厚みが14mmであるため,1/2Rを中心に2本の角状試験片を切り出した.これらの試験片から,直径6 mm,標点距離30mmの丸棒疲労試験片,引張試験片を作成した.またこの近傍から,組織観察用に5mm幅の板を切り出した.組織観察には後方散乱電子回折(EBSD)を搭載した走査電子顕微鏡(SEM, JEOL JSM7200F)を用い,加速電圧20kVで組織観察を行った. 引張試験は,耐力まで10MPa/sec,耐力以降は破断まで20%/minの速度でおこなった.疲労試験は, 通常疲労と台形波のDwell疲労試験の2種類を行った.通常疲労試験は,0.2%耐力()の0.9を最大応力とし,R=0.1,5Hzの条件で破断まで試験を行った.Dwell疲労は0.9を最大応力とし,R=0.1,最大応力保持時間を120s,0.09から0.9を1sで変化させる台形波を用いて試験を行った. 3.1 1500t鍛造シミュレータ鍛造材の組織 1500t鍛造シミュレータで鍛造した鍛造材の組織を図4に示す.70%鍛造材は,歪み速度で組織に大きな違いはなかったため,歪み速度0.5/sに対して,鍛造温度の違いについてのみ示す.鍛造温度が1000℃の時は,初期組織とほぼ変わらずbi-modal組織を示した(図4(a)).一方,940℃における鍛造では,層状組織が分断された組織を形成した(図4(b)).等軸α相の割合は鍛造温度が低いほど多くなった.これは,鍛造温度でのα相とβ相が平衡する体積率に対応している.1000℃85%鍛造材は,70%鍛造材と同様にbi-modal組織を形成した(図4(c)). 図4 1500t鍛造シミュレータによる鍛造組織 比較のために,2022年の報告書に示した,8 mm φ x 12 mm L サイズの試験片を25t鍛造機で75%鍛造した組織を図5に示す.900℃鍛造材は,ひずみ速度によらず,鍛造中の変形により組織が大きく歪んでいる.1000℃鍛造材においても,層状組織は分断するが,分断したβ相の球状化が進んでいる.これは特に遅いひずみ速度で顕著であった. 図5 25t鍛造シミュレータによる鍛造組織 このように,1500t鍛造材と25t鍛造材では組織が大きく異なる.これは,1500t鍛造では試料サイズが大きく,鍛造後空冷しても,試料内部の冷却速度が遅くなり,鍛造後しばらく高温にさらされることから,組織の粗大化が進むためである.一方,25t鍛造では試料サイズが小さく,鍛造後の冷却速度が速いため,鍛造中に形成された組織がそのまま室温に持ち来されたと考えられる.1500t鍛造機- 23 -

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る