FORM TECH REVIEW_vol33
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白いコントラストで示されるbcc構造のβ相とα相の2相層状組織で構成されるbi-modal組織を形成していた. 2.2 鍛造条件 インゴットから,100mmφx 100mmLの円柱形の試料を切り出した.この試料を用いて,物質・材料研究機構に設置されている1500t鍛造シミュレータ(図2)により,鍛造温度940および1000℃において,歪み速度0.005,0.05, 0.5/sで圧縮率70%の恒温鍛造試験を行い,0.5 /sのひずみ速度については85%の恒温鍛造試験も行った.鍛造後は空冷した. 図1 TIMETAL 834の初期組織 図2 1500t鍛造シミュレータの外観 御手洗 容子 ででくくだだささいい Ti合金は,軽量で耐熱性に優れるため,ジェットエンジンの圧縮機に使用されている.近年,Ti合金部材の疲労破壊が原因とされるエンジントラブルが少なからず発生(例えば2018年夏ANAの大量欠航,FAAの耐空性改善命令)しており,Ti合金の疲労特性はエンジンの安全性を保持するために重要である. 圧縮機の中でも,動翼を支えるディスクは,鍛造で製造されているが,疲労破壊を引き起こすと深刻なトラブルに発展するため,特に疲労特性が重要となる部材である.通常,ひずみや応力を周期的に変化させることによる材料の劣化を疲労(fatigue)というが,最大ひずみや最大応力をある時間一定に保持することによる劣化をDwell 疲労という.鍛造で製造されるTi合金部材には,しばしばhcp構造であるα相の集合組織が局所的に分布するmicrotextureという組織が形成される.α相のすべり面である底面が引張方向に垂直方向を向くように結晶粒が並ぶことで,転位のすべりが可能であった結晶粒とmicrotextureの境界に転位が蓄積し,そこからき裂が発生,進展する1).き裂が進展を始めると,一気に進行するため,通常疲労と比べてDwell 疲労の寿命が低下することが知られている2).これは耐熱材料に使われるα+β2相Ti合金でよく起こる現象であり,microtextureをどのように制御するかが重要である. そこで,本研究では,最も耐熱性の高い耐熱Ti合金であるTIMETAL 834合金に着目し,恒温鍛造が可能な1500t鍛造シミュレータを用いて鍛造・熱処理組織の形成過程を調べた. 次に,異なる組織を有する試料を用いて疲労,Dwell疲労の評価を行い,異なる組織が疲労寿命に与える影響について検討した.これらの結果から,疲労に優れた組織形成が可能な鍛造・熱処理プロセスを探索する. TIMET社のTIMETAL834 (Ti-5.8Al-4Sn-3.5Zr-0.7Nb-0.5Mo-0.35Si-0.06C, wt%)のインゴットを購入した.インゴットサイズは300mmφx 300mmLの円柱形である.インゴット垂直方向の初期組織を図1に示す.等軸状のα相と,写写真真位位置置 削削除除ししなないい1.まえがき 2.実験方法 2.1 合金 Report1500t鍛造シミュレータにより鍛造したTi合金の組織と疲労特性御手洗 容子*Y. Mitarai*東京大学 教授 - 22 -1500t鍛造シミュレータにより鍛造したTi合金の組織と疲労特性

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