Report鍛造におけるねじり振動付加松本 良*R. Matsumoto*大阪大学 准教授 松本 良 ででくくだだささいい 目して,圧縮,引張り,曲げ,ねじり,回転等を組み合わせた塑性加工法の研究・開発が取り組まれている1).軸対称形状の鍛造加工では,圧縮軸方向の垂直応力・ひずみに対して圧縮軸まわりのねじり・回転によるせん断応力・ひずみを重ね合わせることが多い.これらの目的は形状・材質制御,加工荷重低減,流動応力測定,トライボロジー特性評価等,多岐にわたる. 特に巨大ひずみ導入による微細結晶粒の発現を主眼とした強ひずみ加工が数多く考案されている.多くは外形の変化をほとんどともなわず,例えば,薄い円板状やリング状の試料に数百MPa~数GPaの軸方向の垂直応力下でねじりを付加するHigh-Pressure Torsion(HPT)法2)やねじり圧縮法3)が古くから取り組まれている.最近ではHPT法を応用した高ひずみ域までの応力-ひずみ曲線の導出4),動的なHPT試験5)やEqual-Channel Angular Pressing(ECAP)におけるねじり付加6)が提案されている.一方,垂直応力とせん断応力の重ね合せは,金型-被加工材間に厳しい接触・すべり状態を生み出すことから,後方押出し鍛造等を対象に摩擦・潤滑試験としても応用されている7),8). 異なる方向の応力・ひずみ成分の重ね合せは,主加工方向の応力成分の低減9)や塑性流動の変化を引き起こす.このことを応用して,例えば,据込み鍛造において一方向高速回転を付加する高速回転鍛造加工10),11),型鍛造において両振りねじりを付加するKOBO法12)が考案されている.特にKOBO法では材質制御の観点からも精力的に調べられている. 本稿では,鍛造における繰返し両振りねじり(ねじり振動)付加の効果について,軸方向荷重,付加ひずみ,塑性流動に大別して,筆者の取組みを紹介する. 写写真真位位置置 削削除除ししなないい1.はじめに 異なる方向の応力・ひずみ成分の重ね合せ(複合)に着2.ねじり付加の種類・部位および加工試験機 2.1 ねじり付加の種類および部位 図図113)は円柱および円筒素材に対して,高さ方向(z)軸(半径(r)方向中心)まわりのねじり付加の種類を示したものである.回転させる金型の部位により,被加工材の上・下端面,外・内径部からの2種類のねじり付加がある.ぞれぞれz,r方向に対して周()方向回転速度が変化し, z,r成分のせん断変形が付加されることが示唆される. 金型の周方向回転による被加工材へのモーメントの伝達は金型の形状や表面凹凸による幾何学的拘束と金型-被加工材間のすべり摩擦に大別される.幾何学的拘束では金型と被加工材表面の回転速度は等しく,すべり摩擦では被加工材表面の回転速度は金型の回転速度に対して低い. 2.2 加工試験機 図図214)はねじり振動付加鍛造加工用に設計・製作した加工試験機の外観写真である.サーボモータを駆動源として, 図1 円柱および円筒素材に対する据込み鍛造,後方押出し鍛造におけるねじり付加の種類および金型の動作13) 図2 ねじり振動付加鍛造試験機の外観と構成14) - 16 -鍛造におけるねじり振動付加
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