FORM TECH REVIEW_vol33
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素形材製品図1 材料プロセスの観点から見た冷間・熱間鍛造加工 特別寄稿鍛造を用いた材料プロセス開発柳本 潤*J. Yanagimoto*東京大学大学院 工学系研究科 教授 柳本 潤 均質化処理冷間鍛造熱間鍛造加熱調質(熱処理)放冷加熱調質(熱処理)制御冷却熱間鍛造・冷却ででくくだだささいい 塑性加工は,金型や塑性加工機械による形状の創成と,塑性変形を利用した材料特性の創出を行う,加工技術である.航空機の機体およびエンジン回りの大型部品やエンジン用のクランクシャフト・建設機械用などの中型部品には熱間鍛造が,自動車用を主とする小型部品には,冷間鍛造が多用されている. 本稿では,鍛造を用いた材料プロセス開発を概観する.材料プロセス開発の視点から見ると,冷間鍛造は熱処理が主で調質の役割を担っている.つまり,冷間鍛造時の塑性変形を受けて実施される,いうなればPassiveな材料プロセスとの位置にある.比較して熱間鍛造は,析出,再結晶および変態による内部組織制御を利用することで,機械的特性の制御を行うわけであるから,塑性変形と冷却履歴を組み合わせた,Activeな材料プロセスに位置付けることが出来る.以下では,それぞれのプロセスで起こる現象について,材料プロセスを制御の枠組みで説明を試みる. 整理して示す。鍛造では,多工程で素形材を造形し,素形材製品に近い寸法,あるいは素形材製品寸法までの造形が行うことを特徴とする.なお図1では,多工程による鍛造加工を一つの枠で簡略化して記している. 冷間鍛造では,多くの場合熱処理が行われ,塑性加工により導入された転位による強化の影響を調質することで, 写写真真位位置置 削削除除ししなないい1.まえがき 2.材料プロセスとしての冷間・熱間鍛造 図1に冷間・熱間鍛造加工を,材料プロセスの観点から素材加熱求められる機械的特性を有する製品を得る.この場合には,塑性加工による塑性変形の付与を受けて行われる熱処理が,機械的特性を制御するための材料プロセスの主要な部分となっている.一方で,冷間鍛造のままで製品となる場合もあり,この場合には,機械的特性を制御するためのプロセスは,冷間鍛造である.所望の素形材製品の機械的特性が強度あるいは硬度のみで規定される場合には冷間鍛造での転位強化の度合いが十分であれば良い.一方で,じん性などの内部組織や結晶粒径に関連した機械的特性までを制御した素形材製品を冷間鍛造により加工する場合には,非調質鋼を利用することがある. 熱間鍛造では,再結晶温度以上で塑性変形を付与し,その後の冷却変態の組み合わせにより半製品を創成し,さらに熱処理で調質することで求められる機械的特性を有する素形材製品を得る.大型鍛造品については鋳造材を出発材とする場合もあり,加熱時に均質化処理が行われる.熱間鍛造後の工程は3種類に大別できる.放冷のままの場合,放冷後再加熱して熱処理を行なう場合,制御冷却を行う場合である.制御冷却時に塑性加工を組み合わせて行うことで,加工熱処理を行うことも原理的には可能であるが,鍛造では変形の不均一性が大きいため制御が難しく,さらに,温度制御も困難である.難易度は高いとはいえ,機械的特性を制御するための材料プロセスが,転位強化(硬化)に加え,再結晶,回復,析出といった素材の内部組織変化に深く関わっていることが熱間鍛造の特徴であり,これ熱間鍛造をActiveな材料プロセスとしている所以である. - 9 -鍛造を用いた材料プロセス開発

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