]%mta[図10に浸漬方式およびミスト供給方式のそれぞれを用いてチタン合金(Ti-6Al-4V ELI)試験片に対してレーザ照射処理を施した表面に対してSEMにより観察した結果を示す.同図より,浸漬方式を用いて処理を施した試験片上 つぎに,形成した改質面が細胞増殖性に及ぼす影響を調べるため,骨芽様細胞(MC3T3)を用いた細胞培養試験を 401×数胞細 個[543210 ]3210P果結析分分成Ca1.9 0.5 0.5 2.7 6.おわりに 謝 辞 参考文献 には,レーザ照射により,わずかに表面が加工されたことを示すディンプルが認められる.一方で,ミスト供給方式を用いて処理された試験片表面には,レーザスポット径と同等の幅の溝が形成され,さらに溝内部にはマイクロメートルオーダーの微細な“ひだ”形状が存在していることがわかる.この形状は図1に示した人工歯根側面に施されたマイクロテクスチュアに類似しており,細胞適合性向上に寄与するものと考えられる.また,それぞれの処理面のカルシウム及びリンの存在割合について調べるため,電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いた成分分析を行った.その結果を図11に示す.同図より,ミスト供給方式により形成された被処理面のカルシウムおよびリンの存在割合は,浸漬方式によるそれと比較して多いことがわかる.レーザが溶液を透過する際,レーザは溶液に吸収され減衰することにより,エネルギ量が低下する.浸漬方式を用いた場合には,試験片表面にレーザが到達するまでに透過する溶液の量が,ミスト供給方式と比べて多いため,試験片への入熱量がより減少し,その結果,改質面に含まれる溶液由来成分の存在割合が減少したものと考えられる. 図10 改質処理を施した試験片のSEM観察結果8) 図11 被処理面の成分分析結果8) 行った.3日間の培養後の生細胞数をMTT-Assayによって計測した結果を図12に示す.なお,同図には,比較として,大気中でレーザ照射を施し,図9に示したマイクロテクスチュアが形成された試験片を用いて試験を行った結果も示した.同図より,大気中でレーザ照射を施した試験片と浸漬方式を用いた試験片上の細胞数はほぼ同等で,ミスト供給方式を用いて,改質処理を施した試験片上の細胞数が多いことがわかる. 図12 ミスト供給方式により改質処理を施した 本稿では,レーザ誘起湿式表面改質処理により,チタン材に対して,細胞適合性が向上した事例について紹介した.ヒトの歯の向きは一本一本異なるため,歯の代替となるデンタルインプラントは,多軸加工機によりオーダーメイド製造される.ここで紹介した技術は,切削加工により形状を削り出された後,切削工具の走査パスを応用してレーザ照射を施すことで,段取り替えなしで表面処理を施すことが可能であり,現在,実用化に向けた共同研究を継続している.今後は,抗菌性や細胞接着性など異なる機能を必要な箇所に選択的に付与する目的別表面改質技術の確立にチャレンジする. 本研究の一部は,公益財団法人天田財団からの一般研究助成により実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします. 1) 1 H.E. Götz, M. Müller, A. Emmel, U. Holzwarth, R.G. Erben, R. Stangl: Effect of surface finish on the osseointegration of laser-treated titanium alloy implants, Biomater., 25(2004), 4057. 2) J.C. Keller, C.M. Stanford, J.P. Wightman, R.A. Draughn, R. Zaharias: Charactarizations of titanium implant surface, J. Biomedical Mater. Res., 26(1994), 2, 939 3) D.L. Cochran, R.K. Schenk, A. Lussi, F. Higginbottom, D. Buser: Bone response to unloaded and loaded titanium implants with a sandblasted and acid-etched surface, J. Biomed. Mater. Res., 40(1998), 1, 1. 試験片上での骨芽細胞増殖試験結果8) ミスト供給方式浸漬方式大気中ミスト供給方式浸漬方式- 89 -
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