i0VHssendraHsrekcV図13(b)に積層造形した試料の真応力-真ひずみ曲線および加工硬化率の変化を示した.いずれの試料も,ひずみの増加とともに加工硬化率が減少する傾向を示した.CP-Tiと比較して,酸素を含むTi合金はより大きな加工硬化率を示し,塑性不安定が抑制されていることを示唆している.Ti合金が大きな均一伸びを有するのは,より高いひずみに達するまで大きな加工硬化率が維持され,くびれの発生が抑制されたためと考えられる.これらの結果は,Tiに酸素等を添加することで,くびれの発生が遅れ,高強度が図11 積層造形試料のIPFマップ(a-c)と極点図(d-f).(a, d) 0%, (b, e) 1%, (c, f) 2%酸化物 400300200100図12 純Ti,Ti64と積層造形した試料の硬さの比較 と比べ,酸化物を添加した試料の硬さが大幅に向上した.Tiに1%酸化物を添加した造形体の硬さはTi64合金とほぼ同じで,2%添加試料の硬さはTi64より約27%向上した. 引張試験結果の一例として,図13(a)に造形方向に垂直した方向に造形した試料の公称応力-公称ひずみ曲線を示す.積層造形したCP-Tiの引張強さと伸び率はそれぞれ419MPaと18.6% (平均値)である.酸化物を添加することによって,耐力や引張強さが著しく向上し,1%,2%造形試料の引張強さはそれぞれ900MPa,1073MPaに達した.従来のTi64合金の引張強さは895MPa程度であり,1%造形試料の引張強さはTi64合金に匹敵し,2%造形試料ではそれを凌駕する値が得られた. これらの結果から,純Tiに酸素を導入した造形試料の硬さや強度は,純Tiより大幅に超えており,Ti64合金の圧延材を凌駕することが分かった.これは積層造形時の急速凝固による組織の微細化及び酸素等の固溶強化によるものと思われる.なお,0%造形試料は造形方向によって強い強度異方性を有することが確認された.これは前述した強い集合組織に由来するものと思われ,酸素の導入によって結晶異方性が緩和され強度の異方性が著しく低下しCP-TiTi-64Ti-1%oxideTi-2%oxideた.一方,延性については,図13(a)に示すように,酸化物を添加した造形試料は驚くことに1%試料はCP-Tiを超え,2%試料の伸び率はCP-Tiに匹敵する結果となった. 実現するとともに,均一伸びが大きくなることを示している. 一般的に,Tiに酸素を導入すると強度は著しく向上するが,延性は低下することがよく知られている15).しかしながら,本研究でレーザ積層造形プロセスによって作製された高酸素Ti合金は,高強度と高延性の両立が可能であることを示した.酸素の存在によって,塑性変形の際に双晶変形がほぼ抑制され,すべり変形が塑性変形の主なメカニズムであると思われる.Tiのすべり変形において,主すべり面である柱面すべりよりも錐面すべりの臨界分解せん断応力(CRSS)が高いため普段活動が困難であるが,EBSD解析を行った結果,酸素を含んだ試料の錐面すべりのシュミット因子が高くなる傾向を示した.これは,Tiに酸素を導入することで錐面すべりのCRSSと柱面すべりのCRSSの比が小さくなり16,17),柱面すべりに加え錐面すべりの活性化が示唆されている.また,図11に示したように,積層造形したTi合金の結晶粒が微細化され,これが<c+a>転位すべりの活性化に寄与する18)と考えられる.さらに,Tiに酸素を添加する結果,軸比c/aが増加し(図10),底面と錐面すべりを促進することも期待される. - 83 - </c+a>
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