図12 ラット背部皮下移植4週後に摘出した人工骨内に形成された新生骨形成評価。脱灰後H-E染色像。(a)コントロール(β-TCP人工骨)、(b)1%SrSiPコート人工骨。 図13 PP焼結多孔質体とこれにSrZnSiPをレーザー溶着3.5 その他の検討 3.5.1 プラスチック製人工骨の試作検討 人工骨はリン酸カルシウムの焼結多孔質体で生体吸収性が長所であるが、硬くて脆いためコラーゲンとの複合体である生体骨のような強靭な性質は期待できない。これに対して先に示したようなプラスチック材料の中で生体骨に近い力学物性を有する素材は多種あることから、本研究で開発したアパタイトのレーザー溶着技術を利用してプラスチックの焼結多孔質体の表面および細孔内部にアパタイトをレーザー溶着することで、人工骨として機能できる材料の創出を試みた。 図13にポリプロピレン(PP)焼結多孔質体にSrZnSiPをレーザー溶着した試料のSEM写真を示した。焼結多孔質体の表面がSrZnSiP粒子で被覆されていることが分かった。この場合、気孔率は50%前後で気孔径約200 μmの連通孔を形成していることが認められた。細孔内部にはレした試料のSEM写真(a)PP焼結多孔質体(×50)、(b)同SrZnSiPコート試料(×50)、(c)同(×500)、(d)同(×30,000)。 と選択的核酸吸着担体の試作8),9) 謝 辞 参考文献 ーザー光は到達しないが、コーティングしたアパタイト層の熱伝導率が高いためレーザー照射で細孔内のアパタイト層まで溶着していることを確認した。 3.5.2 プラスチック表面でのアパタイトの結晶成長 プラスチック表面においてアパタイトの結晶成長を行い、特定の結晶面が露出した異方性アパタイト結晶層を基材表面に形成する検討を実施した。即ちストロンチウムアパタイトの前駆体であるSrHPO4結晶を微粒化して基板表面にレーザー溶着し、アルカリ水溶液中において基材表面でストロンチウムアパタイト結晶を成長させた。SrHPO4結晶を低温で加水分解するとNaSrPO4(ナストロファイト)結晶を経由して、ファイバー状のストロンチウムアパタイト結晶が生成することを見出している。図14にはUHMWPEディスク表面に繊維状SrHAP結晶を成長させた試料のSEM写真を示した。ファイバー状結晶の側面にSrイオンが配向し、この面に対して、核酸の選択的吸着が起こることを確認した。 図14 UHMWPEディスクにSrHPO4をレーザー溶着しアルカリ水溶液中でSrHAPを結晶成長した試料のSEM写真(a)×500倍(b)×11,000倍。 本研究は,公益財団法人天田財団からの一般研究助成により実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします. 1) Furukawa, A., et al., Mater. Chem. Phys. (2022) 288, 126352. 2) Furukawa, A., Ceram. Int. (2021) 47, 21848–21861. 3) de Jongh, P.E. & Eggenhuisen, T.M., Advanced Materials, (2013) 25(46), 6672. 4) Kawasaki, S., et al., BMC Musculoskelet. Disord. (2020) 21, 692. 5) Furukawa, A. & Tanaka, Y., Coatings, (2023) 13, 580. 6) Egawa, T., et al., BMC Musculoskelet. Disord. (2019) 20(1) 1-9. 7) Sugimoto, H., et al., BMC Musculoskelet. Disord. (2021) 22, 673. 8) Furukawa, A. & Tanaka, Y., Crystals, (2022) 12, 1705. 9)特開2021-132622(出願日2020.2.28) - 78 -
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