図8 コロイダルシリカ溶着層(図7)表面に更にヒアルロン酸をコートしたUHMWPEディスクの(a)SEM観察、(b)元素分析(EDS)、(c)3-Dプロファイル。 UHMWPE表面にコロイダルシリカ(オルガノシリカゾルMA-ST,平均粒子径12nm)をコーティングし、常温で乾燥後表面をレーザー照射し150℃まで加熱した。図7にレーザー溶着したコロイダルシリカ層の表面のSEM像と元素分析結果を示した。コート面の接着性は極めて強固で (黒)、コロイダルシリカ溶着層表面(青)、ヒアルロン酸コート表面(橙)。下図に測定系の概要を示した。荷重を加えた剛体球が試料表面に接した状態で移動する際の摩擦抵抗を測定した。 未処理UHMWPEディスクを比較として、アパタイトをレーザー溶着したUHMWPEディスク表面で、PEEKの場合と同様に骨芽細胞前駆体細胞の培養を行った。未処理のUHMWPEの場合には細胞の初期接着が不良で、細胞の増殖に乏しく形態の変化は認められなかったが、アパタイトを溶着した系では何れも細胞数が顕著に増加し、アクチンフィラメントの伸長による細胞の形態変化も観察された。細胞培養前後のSrSiP溶着UHMWPEディスク表面の様子を図6に示したが、PEEKの場合と同様に、培養後のディスク表面に顕著なECMの蓄積とリン酸カルシウムの沈着が観察された。こうした特徴は基材の種類に関わらず、コートしたアパタイトの性質に拠ることが示された。 図6 (a)UHMWPEディスク表面での細胞培養前のSrSiPコート層表面SEM観察像、(b)同EDSによる元素分析、(c)細胞培養後のSEM観察像,(d)同元素分析結果。 人工関節の摺動材として利用する場合、摩擦による微粒粉の発生が問題になる。関節液中においてUHMWPE表面の潤滑性を増加させるため、ヒアルロン酸をUHMWPE表面に固定化することを試みた。両者を直接結合することは困難であるため、中間層にコロイダルシリカをレーザー溶着した層を設け、その表面の水酸基とヒアルロン酸の側鎖官能基とを架橋剤で結合することを試みた。 図7 コロイダルシリカを溶着したUHMWPEディスクの(a)SEM観察、(b)元素分析(EDS)、(c)3-Dプロファイル。 強く擦過しても剥離しなかった。コロイダルシリカ層をアルカリ水溶液で溶解してSEMによりコーティング界面の様子を観察したところ、コート面においてUHMWPE表面の隆起が認められ、シリカ粒子間の微小間隙にUHMWPEのポリマー鎖が浸透していることが示された。 コロイダルシリカ層の表面にヒアルロン酸(分子量600~1200 kDa)水溶液(2%TEOS添加)をコートして加熱処理した。図8にヒアルロン酸をコートした際の表面のSEM像と元素分析結果を示した。コーティングによりコロイダルシリカ層の微細なひび割れ部分は埋められたが、幅の広いひび割れ部分は埋まらなかった。 図9 水中での表面摩擦係数の比較。UHMWPE- 76 -
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