FORM TECH REVIEW_vol32
52/108

しやすいことが示唆されている10).再結晶後の組織では加工前よりも等軸で均一な組織が確認できた. 図5 熱処理後の温度と硬さの関係 図6 光学顕微鏡による断面組織 (a)As材, (b)PTCAP加工後,(c)熱処理後 3.2 PTCAP加工が結晶方位に及ぼす影響 PTCAP加工の影響及び再結晶が及ぼす結晶方位の変化を確認するために,As及び熱処理前後にXRD解析を行った.測定した値を粉末試料から標準化することで,加工と再結晶における優先方位を特定した.その結果を図図77に示す.結晶方位は主に{100}//ND,{110}//ND,{111}//NDが確認されたが,それ以外の方位が確認できる.As材では粉末試料と比較して{110},{111}が弱く,{310}が強い.これに対して,PTCAP加工によって{321}が強くなったことが分かる.この変化は組織観察よりせん断帯の影響が示唆される.加工時にせん断帯形成の要因となる局所的な方位回転が起こり,せん断帯が{321}として形成されたと考えられる.再結晶後では{321}が残留し,{111}も強くなっていた.ニオブは圧延を施すと,圧延率の増加に伴い加工後とその後の熱処理において{111}//NDが強くなる.PTCAP加工では加工後と熱処理後では{321}が強くなっているため,この変化はPTCAP加工特有である. そこで同じBCC 構造を有する鋼板で成形性の指標であるr値との相関があるとされる{111}と{100}のX線回折の強度比を,加工前,加工後,熱処理された試料について図図88に示す.図8より熱処理によって割合が大きく上昇していることから成形性が向上していることが考えられる. 図7 X線回折による主要方位のピーク高さ 3.3 PTCAP加工による材料的特性の変化 PTCAP加工前後で熱処理した試験片の加工性を調査するため引張試験を行った.加工において材料の面内での異方性は成形限界に影響するため,引張試験は管材の長手方向である軸方向,円周方向及びそれらの間となる45°方向で行った.そのうち軸方向と円周方向について応力-ひずみ線図を図図99に示す. PTCAP加工によって軸方向,円周方向ともに破断伸びが大幅に改善されたことが分かる.さらに均一伸びも大幅に改善された.改善された理由としてPTCAP加工と熱処理によって等軸で均一な再結晶粒が得られたことが原因である.3方向の応力ひずみ線図から得られた加工硬化指数(n値)の平均値を図図1100に示す.伸びと同様に加工硬化指数もPTCAP加工によって20 %ほど向上した.加工硬化指数と液圧成形性との理論的関係が示されている11).また,引張試験で得られたr値を図図1111に示す.円周方向ではr値に大きな変化はないが,軸方向および45 °方向では向上していた. 図8 各工程後の{222}/{200}X線強度比 - 50 -

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る