FORM TECH REVIEW_vol32
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図4 高空隙率材の顕微鏡組織写真(ビッカース圧痕)5) 図3に,細管の厚さ(t=0.5,0.3,0.2mm)を変化させて得られた空隙率の異なる材料について,横断面の光学顕微鏡写真を示す.図3のいずれの写真にも,3 つの細管が最後に衝突・接合する部分において,激しい変形・衝突で生中空隙率(b), 高空隙率(c)5) 3.実験および評価結果 起爆後,爆薬中に爆轟波がまず伝播し,その時に生じる超高圧の爆轟ガス圧力(推定値;0.763GPa5))の作用によって外管(太い管)が数百m/s程度の高速に加速され,細管を圧縮しながら成形加工が進み,最終的には空隙のない成形体が回収される.細管中に挿入したロウは,成形体回収後も細管内にとどまっており,期待したような均一な一方向多孔質構造が得られた. 3.1 銅のユニポア材に関する実験結果 図2に,回収された試料の外観と切断面の横断面写真を示す.回収された材料は,上下端の部分以外は概ね均一に成形されていると共に,断面写真を見る限り細管同士は良好に接合されていると思われた.試料の上端部は上方にある爆薬からの圧縮作用による変形,下端部は栓で封じた終端部分が慣性力によって引張破断を生じていた. 図2 回収材料の外観と横断面5) じた溶融部が観察された.これは通常の爆発圧接と同様に,金属の高速傾斜衝突による金属ジェットによって生じた可能性もあるが,後に示す数値シミュレーションでは大変形後の温度上昇によって溶融が生じたとも考えられた.いずれにしても,細管同士の結合は良好であり,管壁同士が強固に接合している状況が確認された. この溶融部周辺の硬度測定を行った結果を,図4に示す.図4によると,溶融部のビッカース硬度値(HV)は 44~61程度で,焼きなまし処理した銅の硬度(HV60 程度)か,低めの値を示した.特に硬度の低い領域は,溶融部に微細な収縮孔などの欠陥が多少生じていると推察された.これに対して溶融部以外は,HV130~150程度の値を示して十分に加工硬化していた.ちなみに,入手ままの銅の硬度値は HV120 程度であった.また,溶融部近傍の非溶融領域では高い硬度値が測定されており,これは激しい高速変形によって材料組織中に多くの構造欠陥が導入されたことによると思われた. ここで,材料の断面積から計算した空隙率を,初期断面積から推定した理論空隙率と比較すると,いずれの試料についても実測値が理論値よりわずかに低下した.これは,細管の下端から多少のロウが,押し出されたことによると思われた. 図3 断面の光学顕微鏡組織,低空隙率(a), - 37 -

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