極小の中空針を作製する際,金属加工では絞り加工に限界があり作製不可である.そこで本研究では,生体適合 3.穿刺デバイス b) 先端拡大図 c) 設計図 で作製できるので,先端形状の変更が容易である. ③既存の金属針は,その材質から焼却廃棄に大きなエネルギーが必要である.しかし,今回の材質であるPLAは生 分解性プラスチックでは,使用後に安全に水と二酸化 炭素に分解処理することが可能であり,廃棄が容易で ある.将来的には土中廃棄も検討している. ④金属の注射針は,一部の患者で金属アレルギー反応が出てしまうという課題がある.しかしながら本注射針は,生体適合性樹脂を使用しているため,アレルギーの問題は発生しない. 回転動作によって静止摩擦が動摩擦に変わるため,皮膚が受ける抵抗力が低く抑えられる.1章で既に述べたようa) 模式図 b) 実物の写真 c) 設計図 図4 作製した穿刺デバイス 2.PLA中空針 2.1 針の作製 性材料である医療用プラスチックPLA(Poly lactic acid,ポリ乳酸)を用いた射出成形によって針を作製した.成形用金型の設計・製作については協力関係にある成形メーカとディスカッションの上,寸法・形状を決定した.実際に作成した針を図3に示す.先端径は130 μmである. 2.2 吸水実験 作製したPLAの針が実際に中空構造であるかを確かめるために,簡易的な吸水実験を行った.針をガラスパイプを介してポンプに接続し,水滴を吸水した.その結果,詰まることなく吸水に成功した.このことから設計図通り中空であることが確認できた.また,液体をカエル(アフリカツメガエル)の血液に変更して同様の実験を行った場合でも同様に吸引が確認できた.これらのことからこの注射針が実際に採血用として使用可能であるということが確認できた. 2.3 既存の金属針との比較 今回作製したPLA中空針は既存の金属針と比較して様々な優位点がある. ①既存の金属針の先端の外径は最小の商品で180μmである.一方で今回のPLA中空針は先端の外径が130μmでありさらなる細径化に成功した. ②金属針ではプレス加工や絞り加工を用いて細くしている.そのため加工に限界があり細さに限界が存在する.しかし,本注射針は樹脂成形で作製しているため型を作製することができれば,簡単に細くすることができ,細さに限界がない.また,金型に関しては3D構造物の転写a) 全体写真 図3 作製したPLA針 - 28 -
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