写写真真位位置置 削削除除ししなないいででくくだだささいい 山中 将 30~35 MV/mに達した2).しかし,この方法はコスト低減には不十分であり,1本の長尺パイプから一気に9セル空洞を液圧成形で製造することが必須と考えた.現在のところ,これは実現されていない. 本研究の最終目標は1本の長尺パイプから一気に9セル空洞を液圧成形で製造し,空洞性能が従来技術で製造し1.3 GHz空洞の赤道部(大径部)の内径は,205 mmである.一方,アイリス部(小径部)の内径は70 mmである.70 mmのパイプを205 mmまで膨らませるには,円周方向に200%程度の伸びが必要である.ニオブの伸びは50~60%であるため,これは困難と予想できた.そこで,小径部と大径部のほぼ中間値である内径123 mmのパイプを用いることにした.従来のプレス加工によりセルを製造する場合,板厚2.6 mmのニオブ板材を用いているが,シームレスパイプの肉厚は少し大きく3.5 mmとした.液圧成形により空洞の赤道部の肉厚が薄くなることが予想され,そこでも2.6 mm程度を確保するためである. 1.まえがき 粒子加速器は,電磁波などを使って電子や陽電子などの粒子にエネルギーを加え,粒子を加速する装置である.加速した粒子を衝突させて噴出する様々な粒子を観測したり,がん治療のための医療機器に用いられたり,様々な学術および産業用途がある.加速器には種々の方式があるが,図 1に示す超伝導加速空洞は,空洞セル内に大電力の高周波を導き,空洞内にできる電場を利用して粒子を加速する.空洞の材料には純ニオブが用いられ,液体ヘリウムを用いて4 Kまで冷却し,超伝導状態にして運転する.電気抵抗がほぼゼロのため,電力損失や発熱が抑制され,小さな電力,短い距離で大きなエネルギーを粒子に与えることができる.従来の加速器に比べて省エネというメリットがあるが,材料にレアメタルであるニオブを使うため初期コストは高くなる1). 図1 1.3 GHz 9セル超伝導加速空洞(全長1.3 m,従来のプレス加工と電子ビーム溶接にて製造) だ円のセル形状を有する超伝導加速空洞の製造方法は,圧延したニオブの板材をおわん状にプレス加工し,それらを電子ビーム溶接(EBW)で結合する方法が一般的である.空洞は内面が滑らかなことが要求されるが,EBWの電子銃は大型のため,空洞の外側から貫通溶接を行い,隆起の少ない滑らかな溶接裏ビードを形成する必要がある.これは熟練を要する非常に難しい溶接作業である.EBW機の導入コストも高く,EBWが空洞製造コスト上昇の主要因である.EBWを用いずに液圧成形を用いて空洞を低コストで製造する研究が行われている.特にドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)においてSingerらによって精力的に行われた.内径150 mm,肉厚2.7 mmのニオブシームレスパイプを用いて図1に示したものと同形式の3セル空洞を液圧成形によって製造し,これを3台EBWで結合して9セル空洞を製造した.最大加速勾配はた空洞と同等であることを示し,液圧成形がコスト低減に有効であるかを見極めることである.高エネルギー加速器研究機構(KEK)は1994年より液圧成形の研究に着手した3).その後,上野らによりネッキング加工機と液圧成形機が開発され4),シームレスパイプから空洞に仕上げる一連の工程を所内で実施できるようになった.しかしながら当時は成形性のよいニオブパイプが入手できず,液圧成形による空洞製造の成功に至らなかった.本報告では,2012-16年に行ったニオブ製の 1セルと3セル空洞の製造と性能評価の結果について述べる5).さらに2021年より取り組んでいる銅フルシームレス空洞の製造についても紹介する. 2.シームレスニオブパイプ 開発の当初はDESYで実績のある,米国ATI Wah -Chang社(当時)製のシームレスニオブパイプを入手して実験を行った.引張強度190 MPa,伸び56%,硬さ46 HVである.引張強度はパイプを展開し板状にしてから試験片をパイプの長手方向に切り出して,当方で測定した.その後,日本のアルバック社がシームレスニオブパイプの製造に成功し,同社製のパイプも使用し実験を行った. - 10 -液圧成形による超伝導加速空洞の製造
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