FORM TECH REVIEW_vol31
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Δσy[C]= Δσy [GR] + Δσy[SS-N] + Δσy[SS-O]図7Ti-N平衡状態図における本研究で作製した異なる窒素含有チタン積層造形体の相変態挙動■■ 窒素固溶によるα■■■結晶構造の変化と定量解析窒素量: 0%, 0.31%, 0.52%の3種類のTi-N積層造形体を対象にX線回折を実施し,その結果よりα-Ti結晶粒におけるa軸とc軸の各方向での格子定数をBragg’sの関係式17)を用いて算出した.それぞれの格子定数の算出結果と窒素含有量の関係を図8に示す.なお,比較材として固相焼結法で作製した窒素固溶Ti材(PM Ti-Nmaterialsと記す)を対象に,同様にXRD結果から算出した両軸方向の格子定数を同図にプロットした.図8純TiとTi-N積層造形材(N量;0.31%, 0.52%)のXRD結果(a)とa軸,c軸方向の格子定数の窒素量依存性(b)いずれのXRD結果においてもTi2Nの回折ピークが検出されないことからCORE-SHELL構造Ti-N粉末の表面に存在するTi2N皮膜はレーザ照射過程において完全に分解したといえる.また,回折角2θ=38.4°付近にある(0002)底面のTi回折ピークに着目すると,窒素含有量の増加に伴って徐々に低角度側に移行している.この傾向は(b)に示すc軸方向の格子定数の増加挙動に一致している.つまり,窒素原子が固溶することで底面感覚が増大し,c軸方向に結晶が拡張することで格子定数が増大したと考える.他方,2θ=35°付近の(10-10)柱面の回折ピークはほぼ変化しておらず,この結果はa軸方向の格子定数がほぼ一定であることに一致している.なお,これらの相関は高濃度窒素含有Ti焼結材での固溶による格子定数の変化18)と良い一致を示している.■■■引張強度特性と強化機構に関する定量解析最大窒素量が0.7 wt.%までの範囲でTi-N積層造形体を作製し,常温での引張強度特性を調査した.先ず,応力-歪み曲線を図9に示す.窒素量が0.52wt.%に達するまで引張強さおよび耐力値は共に増大しており,特に0.31%までの範囲では破断伸び値は20%を超えており,純Ti材の特性に対して同等以上の高い延性を有する.他方,0.7%においては伸び値が著しく低下することで引張強さや耐力値も大幅に低減していることがわかる.図9高濃度窒素含有Ti積層造形体の引張強度特性前述した結晶集合組織の解析結果と引張強度特性について整理した結果を表1に示す.強化機構に関して,耐力値に着目し,基準となる純Ti材の値との差異をΔσyとする.本実験で作製した試料では,α-Ti結晶粒と窒素および酸素の固溶量が異なることで前者による粒界強化,後者では固溶強化がそれぞれ発現する.一般に粒界強化Δσy[GR]はHall-Petchの経験式19), 20),Δσy [GR]= K(d0−0.5–d−0.5)を用いて算出する(K値は18.6 MPa/mm−0.5を使用21)).また,窒素と酸素の固溶強化量(Δσy [N-SS],Δσy [O-SS])の導出においてはLabuschモデル16)を用いる.その際に必要なシュミット因子Sf値は各試料のEBSD解析により測定した.また,固溶原子と刃状転位間に働く最大相互作用力Fmに関して,既往研究22)で導出した値(Fm[N]=5.21 × 10−10N, Fm[O]=6.22 × 10−10N)を用いた.その結果,理論計算により算出する強化量(耐力増加分)Δσy[C]は次式となる.同表に見るように窒素量の増加に伴って結晶粒の微細化- 93 -

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