FORM TECH REVIEW_vol31
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3.実験結果および考察本実験の温度範囲での熱処理においては,Ti粉末同士は焼結することなく粒子状態を維持し,また酸素量は0.10~0.13 wt.%と顕著な酸化現象を伴うことなく,窒素量を約1.2 wt.%までの広範囲で調整できることを確認した.これらの中で窒素含有量が異なるTi粉末のXRD結果を図5に示す.約0.5wt.%以上の窒素を含むとTi2N化合物相の回折ピークが検出され,また窒素量の増加に伴ってそのピーク強度比は増加しておりTi2N皮膜の生成量の増大が確認された.さらに,2θ=38.4°付近に見られるα-Ti(002)底面に相当する回折ピークは窒素量の増加に伴い低角度側に移行しており,既往研究結果14)を踏まえると,Ti粉末素地中の窒素固溶量が増大したことを意味する.このように熱処理によりTi粉末に取り込まれた窒素成分は,粉末表面のTi2N膜の形成および素地中の窒素固溶原子として存在し,その結果,本研究において目的とする窒素量を含むCORE-SHELL構造Ti-N粉末が得られる.図5純Ti原料粉末および異なる窒素量を含むCORE-SHELL構造Ti-N粉末のX線回折結果■■■法による窒素固溶■■積層造形体の作製 ■ 上記の条件②で作製したCORE-SHELL構造Ti-N粉末(窒素量:1.18wt.%)と純Ti粉末の混合比率を変えることで混合粉末中の窒素量を0.02~0.7 wt.%に調整した.得られたそれぞれの混合粉末を用いてチタン積層造形体を作製する.その際の造形条件として,レーザ入力を変数とし,スポット径30µm,走査速度535 mm/s,ハッチ間隔110µm,積層間隔20µmを選定し,エネルギー密度を83.3, 137.7, 277.8 J/mm3の3条件を設定した.なお,造形過程での酸化反応を抑制すべく,チャンバー内をArガス雰囲気(O2濃度≦100ppm)として矩形状積層造形体(10×10×60mm)を試作した.なお,積層造形体内での亀裂の発生を抑制すべく,純チタン製基板と造形体試料の間に高さ約1.5mmのサポート部を事前に形成した後,各サンプルを作製した.■■■高濃度窒素含有■■造形体の結晶集合組織解析前述の通り,CORE-SHELL構造Ti-N粉末と純Ti粉末の混合比率を変えることで窒素含有量を調整した試料を作製し,SEM-EBSDによる結晶集合組織解析を実施した.その結果を図6に示す.ここでは,窒素含有量と入熱量に対するα-Tiの平均結晶粒径の依存性として整理した.窒素量の増加に伴い針状α-Ti粒は微細化傾向を示し,また,窒素量が約0.1wt.%までの範囲では入熱量の減少により顕著な微細粒化が確認できる.窒素成分を含まない純Ti材ではβ相から直接α相に変態し,SLM法での急速冷却過程では結晶が積層方向へエピタキシャル成長した旧β相の形態を維持したままα相が形成される.図6EBSD解析によるTi-N造形体の結晶集合組織および各入熱条件下での窒素含有量と平均結晶粒径の相関他方,図7に示すように窒素成分を含有する場合(ここでは0.52%),Ti-N平衡状態図が示すようにα+β2相域を伴うため,初析α相がβ→α相変態時に生成するα相の成長を抑制することでα-Ti粒の微細化が進行したと考えられる.また窒素量が増えると,α+β2相域が増大することで上記の効果がより作用することで微細粒化が促進する.他方,単位体積当りの入熱量の減少によって凝固速度がさらに増大することから粒成長が抑制される.なお,上記の組織形成挙動は酸素固溶Ti積層造形体においても確認されており,窒素と同様にα相安定化元素である酸素を含有することで上述した冷却過程でのα+β2相域を通過することによる組織形成機構といえる.- 92 -

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