FORM TECH REVIEW_vol31
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気での純Ti球状粉末の示差熱重量(TG-DTA)分析を行った結果,窒素との反応開始温度が約580℃であったことを踏まえ,ここでは熱処理条件を①1000℃-5min保持,②800℃-10min保持とし,管状炉(窒素ガス流量5 L/min)を用いて各100gの窒素含有純Ti粉末を作製した.先ず,図1(a)に条件①で作製した純Ti粉末の外観写真およびSEM観察結果を示す.(a-2)および(a-3)に見るように,アルミナ容器内に充填したTi粉末は窒化反応により金色を呈し,仮焼結した状態であった.但し,篩いにより粉砕することで,(a-4)に見るように粉末状態となったものの,凹凸を有する球状粉末であり(a-5)からも比較的小さい粒子が他の粗大粉末の表面に付着していることがわかる.他方,条件②で熱処理した際の純Ti粉末の観察結果を図1(b)に示す.得られた試料は僅かに変色したものの,粉末状態を維持しており,(b-3)のSEM観察結果に見るように微細なTi粒子も独立して存在していた.図1窒素ガス雰囲気にて熱処理を施した球状Ti粉末の外観写真:(a) 1000℃-5分間,(b) 800℃-10分間の熱処理また,レーザ回折散乱式粒子径分布測定装置を用いて両Ti粉末の粒度分布を測定した結果,図2に見るように(a)原料Ti粉末と(b)熱処理条件②を比較すると,顕著な差異は確認されないが,(c)条件①(1000℃)で熱処理を施したTi粉末では2つのピーク分布を有すると共に,原料粉末に対して粗大粒であることがわかる.これは図1(a-5)のSEM観察結果に示したように,微細粒子が粗大なTi粉末表面に結合したことで全体として粗大化したことが原因と考える図2純Ti原料粉末(a)と窒素ガス雰囲気熱処理後のTi-N粉末(b), (c)の粒度分布測定結果次に,各Ti粉末中の酸素および窒素の含有量を分析した.熱処理前の原料粉末ではO; 0.129 wt.%,N; 0.007 wt.%に対して,1000℃-5min保持(条件①)試料において,O; 0.674wt.%,N; 15.14wt.%,800℃-10min保持(条件②)Ti粉末ではO; 0.107 wt.%,N; 1.18 wt.%となった.条件②では,酸素含有量の変化は見られないが,窒素量のみが増加しているのに対して,条件①の熱処理を施した場合,多量の窒素を固溶すると当時に,顕著な酸化反応も進行したと考えられる.ここで,熱処理を施さない原料Ti粉末と条件②で作製した窒素1.18wt.%を含むTi粉末を対象に,断面組織構造をSEM-EDSを用いて調査した結果を図3に示す.原料粉末(a)では表面に皮膜は存在せず,窒素分析量も表面から内部に至ってほぼ均一である.一方,熱処理したTi-1.18%N粉末(b)の表面は,厚さ約1.2 µmの皮膜に覆われており,その領域において窒素成分が濃化していることがわかる.図3純Ti原料粉末(a)とTi-1.18 wt.%N 粉末(条件➁)(b)の表層近傍でのSEM-EDS解析による窒素分布調査結果そこで,熱処理温度を640~800℃とし,各温度にて10分間保持することで異なる窒素量を含むCORE-SHELL構造Ti-N粉末を作製した.得られた各Ti-N粉末における窒素および酸素量の熱処理温度依存性を図4に示す.図4CORE-SHELL構造Ti-N粉末中の窒素および酸素の含有量の熱処理温度の依存性(加熱時間:10分間)- 91 -

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