FORM TECH REVIEW_vol31
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図10.固溶窒素量が異なるチタン積層造形体の常温引張試験結果-213.0435.4560.9766.1-135.8287.1387.8548.4--50.5-16.2-10.4-9.0-127.7164.5183.6226.7-25347555479800H0.090.090.002N0.030.290.731.061.76O0.47Ti-0.1 wt.% N0.43Ti-0.2 wt.% N0.51Ti-0.3 wt.% N0.51Ti-0.5 wt.% N0.53■■■窒素含有■■造形材の力学特性と強化機構の解析窒素固溶Ti材の作製に際して,本研究グループで開発した高濃度窒素成分を有するCore-Shell構造Ti-N粉末9)に前述の球状純Ti粉末を配合した混合粉末を出発原料とした.ここでは両粉末の配合比率を変えることで全体の窒素含有量を最大0.5 wt.%となるように調整した.積層造形においては,先の実験方法で記述の条件を用いた.先ず,高濃度窒素固溶SLM Ti材における常温での引張強度特性を調査した.応力-歪み曲線を図10に示す.窒素含有量の増加に伴い,引張強さおよび0.2%耐力はいずれも増大しており,窒素固溶量が0.3 wt.%ではUTS 976 MPa,伸び値22%といった高強度と高延性の両立を実現した.作製した高濃度窒素含有チタン積層構造体の強化機構に関して,上述の酸素固溶純チタン造形体と同様に,結晶粒微細化と窒素による固溶強化が主たる因子として考えられる.そこで,平均結晶粒径,各試料中の酸素,窒素の含有量,結晶配向性に係るシュミット因子を用いて,結晶粒微細化強化はHall-Petch経験式,固溶強化に関してはLabuschモデルによりそれぞれの強化量(Δσy[GR]とΔσy[SS])を導出した.各強化量は基準となる純チタン積層造形体の耐力値(YS)と各試料のYS値の差とした.各強化量を整理した結果を表1に示す.ここで,引張試験結果に基づいて算出した強化量をΔσy[E],上述した計算結果をΔσy[C]とし,両強化量の相関結果を図11に示す.窒素と酸素の各固溶量とシュミット因子を考慮したLabuschモデルによる固溶強化量の増加分と結晶粒径の微細化強化量の増分の総計Δσy[C]は,実際の引張試験で得られた耐力の増加量Δσy[E]と良い一致を示した.ゆえに,表1に示した各強化因子による計算値を比較すると,窒素固溶強化の寄与度が最も大きく,本材料における主たる強化機構といえる.(%)350.1±6.9398.4±7.3602.6±43.5709.3±47.9825.8±2.1883.2±5.2904.0±28.3976.0±28.51148.0±3.81217.7±7.41.0, 1.5, 2.0) SLM材の結晶粒径を測定した.その結果,平均結晶粒径はそれぞれ,97.4 μm, 4.9μm, 4.5 μm, 4.3 μm, 3.6μmであった.基準となる純Ti材(TiO2粒子無添加)と比べてTiO2添加材の平均結晶粒径は大幅に減少した.この要因として,上述したように0.5 mass%以上のTiO2粒子の添加による初晶α/α’粒の粗大化が抑制された結果と考える.そこで,Hall-Petchの経験則(HP係数として純Tiと同じ15.7 MPa mm1/2を採用した)に対して得られた結晶粒径の値を用いて結晶粒微細化による強化量ΔσYS[GR]を算出した.Labuschモデルの適用に際して,シュミット因子はEBSD解析により得られた計測値を利用し,他の材料定数は既往研究5)での値を採用した.但し,侵入型固溶原子と刃状転位の間に働く相互作用力の最大値Fmについては,既往研究5)と同様に実験データに基づいて4.99×10-10Nを算出した.上述した粒界強化量と固溶強化量に関して,TiO2粒子無添加材を基準とした結晶粒微細化強化量ΔσYS[GR],上記のFm値を用いて算出した酸素固溶強化量ΔσYS[SS-O]および実際の引張特性を併記した結果を図9に示す.理論計算により導出したΔσYS[GR]とΔσYS[SS-O]の合計は,引張試験で得られた実験値と良い一致を示した.酸素固溶強化量ΔσYS[SS-O]はTiO2粒子の添加量に伴い増大したが,結晶粒微細化強化量ΔσYS[GR]はTiO2添加材のα-Ti結晶粒径がほぼ等しく,ほぼ一定の値を示した.結晶粒微細化強化量に対して酸素固溶強化量が最大で約2.6倍であり,酸素固溶SLM Ti材Ti-cmass%TiO2(c= 0.5, 1.0, 1.5, 2.0)では,酸素固溶強化が支配的であることを明らかにした.図9.酸素固溶Ti-SLM材における強化量に関する図9.酸素固溶Ti-SLM材における強化量に関する計算結果と実験値の比較表■■各造形試料の元素分析結果,組織因子,引張特性と各強化量に関する計算結果のまとめChemical compositions (at.%)■■SLM Ti-NspecimensPure TiMean grainsize (µm)Schmidfactor, SfYS, σy (MPa)UTS (MPa)Elongation0.34618.0±0.80.36526.7±1.20.37625.0±1.50.37921.7±0.80.3775.2±1.7TiBal.Bal.Bal.Bal.Bal.30.226.064.513.932.97Increase in calculated YS (MPa)Increase inσy [E] (MPa)Δσy [GR]Δσy [O-SS]Δσy [N-SS]Δσy [C]- 88 -

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