FORM TECH REVIEW_vol31
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図11■アルミニウムを添加した基材上に形成した■■ 超硬合金肉盛層の縦断面光学顕微鏡写真■超硬合金のLMDにおけるガス化反応は,WC由来の炭素と大気由来の酸素に起因するものと考えられており,実際,処理中の酸素濃度を低減することで,気孔が抑制されることを示した.しかし,先述のように酸素は大気中以外に粉末材料や基材にも不純物として含まれることから,処理部において完全に排除することは困難である.そこで,著者らは酸素と親和力の高い元素を利用することで,酸素を酸化物として固定し,炭素とのガス化反応を抑制する方法を試みた9).図11はレーザ合金化法によりあらかじめ表面の一部にアルミニウムを添加したステンレス鋼基材を用いて,超硬合金のLMDを行った際の肉盛層の縦断面写真である.アルミニウムが添加された領域において,肉盛層中のボイドの量が大幅に減少していることがわかる.これは酸素が優先的にアルミニウムと反応し,アルミニウムの酸化物を形成したことで,炭素とのガス化反応が抑制され,気孔欠陥が低減されたためと考えられる. 超硬合金のLMDにおいて,肉盛層の欠陥低減を目的として,処理中の酸素濃度の影響を系統的に調べた.その結果,適正な酸素濃度とレーザパワーの組み合わせによって,ボイド欠陥が抑制され,脆性なW2Cを含まない良好な肉盛層が得られることがわかった. また,補助ノズルを用いてレーザ照射部への大気の巻き込みを防止することも,ボイド欠陥の抑制に有効であることがわかった.なお,補助ノズルを用いることで,チャンバーサイズの制約を受けないため,面状のコーティング処理も可能となるが,単ビードの肉盛層と比較するとボイド欠陥がやや増加する傾向が見られた.そのため,面状のコーティング処理において欠陥を抑制するためには,より精密な入熱制御方法の確立が必要であると考えられる. 石英ガラスを用いた手法により,超硬合金のLMD中の溶融池内部において,気孔欠陥のもととなる気泡が発生し,時間とともに成長,合体する様子を捉えることができた. 気孔欠陥の抑制には,酸素と親和性の強い元素を添加することも有効であることがわかった. 本研究は,公益財団法人天田財団一般研究開発助成(AF-2018217)を受けて行われました.ここに感謝の意を表します. 業試験場■平成29年度研究報告 VOL.67, 5. Al添加領域ボイド通常基材1mm- 82 -5.結論 1) 黒田聖治,渡邊誠:高温学会誌 36 (2010),264. 2) C.P. Paul, H. Alemohammad, E. Toyserkani, A. Khajepour, S. Corbin, Mater. Sci. Eng. A. 464 (2007) 170–176. J. Leunda, C. Sanz, C. Soriano, Surf. Coat. Technol. 307 (2016) 720–727. 3) 4) 山下順広,舟田義則,塚本雅裕,阿部信行:石川県工5) M. Erfanmanesh, H. Abdollah-Pour, H. Mohamma dian-Semnani, R. Shoja-Razavi, Opt. Laser Technol. 97 (2017) 180–186. 6) 田村武夫,浦田泰宏:電気加工学会誌,50 (2016) 205. 7) T. Yamaguchi, H. Hagino, Opt. Laser Technol. 139 (2021) 106922. 8) K. Tanaka, T. Yamaguchi, Surf. Coat. Technol. 447 (2022) 128831. 9) T. Yamaguchi, K. Tanaka, H. Hagino, Int. J. Refract. Met. Hard Mater. 110 (2023) 106020.謝■辞 参考文献

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