図5に大気中で作製した肉盛層の断面SEM写真を示す.高倍率の観察結果から,角ばった形状の相とやや丸みを帯びた相が認められた.SEM/EDXによる元素分析の結果から,角ばった相(Point A)はWCであり,やや丸みを帯びたO2: 0.01%W2CO2: 0.1%O2: 1%図7 チャンバー内で作製した肉盛層のSEM写真 O2: 0.01%, Laser power: (a,c)1400 W, (b,d)1600 W ++ 図5 大気中で作製した肉盛層のSEM写真 相(Point B)はW2Cと同定された.周辺のロッド状の微細な分散相はM6Cと推定される.レーザパワーが大きいほど,WCの体積率が減少し,W2C相の割合が多くなっていることがわかった. 図6に,異なる酸素濃度で作製した肉盛層のSEM写真を示す.同じレーザパワー(1200W)で,大気中で作製した肉盛層(図5(d))と比較して,酸素濃度1 %で作製した肉盛層(図6(c))は,W2C相の割合が少なかった.酸素濃度が0.1%以下(図6(d))になると,W2C相は観察されなくなり,大きなボイド欠陥もほとんど見られなかった.また,原料粉末と同程度の大きさのWCが均一に分散した組織が得られた. 図7に酸素濃度0.01 %で作製した肉盛層のSEM写真を示す.酸素濃度0.01 %,レーザパワー1400 Wで作製した肉盛層の組織(図7(c))は,酸素濃度0.1 %,レーザパワー1200 Wで作製したミクロ組織(図6(d))と大きな違いは認められず,微細なWCが均一に分散した組織が得られた.レーザパワーを1600 Wに増加させると,酸素濃度が0.01 %であっても,大きなボイド欠陥とW2C相の生成が認められた(図7(d)). 図6 チャンバー内で作製した肉盛層のSEM写真 で,WC以外にW2CやM6C(Co3W3C)のピークが明瞭に認められた.これらのW2CやM6Cは脆性な相であり,超硬合金では極力これらの相が混在しないことが望まれる. 図4(c)~(e)はチャンバー内で作製した肉盛層のX線回折パターンである.それぞれの肉盛層は同一のレーザパワー,異なる酸素濃度で作製したものである.大気中で作製した肉盛層と異なり,W2Cのピークはほとんど見られなかった.M6Cのピークは見られるものの,比較的原料粉末に近い相構成であった.また,酸素濃度の違いによるXRDパターンの差は小さかった. 組織観察の結果から,ボイドの発生傾向とW2C相の生成には相関が見られ,酸素濃度を低減することで,ボイドとW2C相の生成を抑制できることがわかった.酸素濃度が高いと,WCの分解あるいは液相への溶出で生じた炭素が容易に酸素と結合し,生成したCOガスが,凝固時に肉盛層内に閉じ込められてボイド状の欠陥となったと考えられる.このことから肉盛層に見られるボイド状の欠陥は,その大半がガスに由来する気孔欠陥であると考えられる.また,炭素がCOガスとして放出されることでCの欠乏した組成となり,脱炭相であるW2C相が生じるものと考えられる.そのため,雰囲気中の酸素濃度を低減することで,ボイドボイドボイドボイドボイドボイド(a)(c)WC(a)(c)WC1000WW2CW2CIn air1200 W(b)100 m(d)WCPoint APoint B5 m(b)100 m(d)WC5 mW2CM6C1200W(a)100 m(c)5 m100 m5 m1400 W(b)100 m(d)WC5 m1600 W100 mWC5 mLaser power: (a,c)1000 W, (b,d)1200 W Laser power:1200 W, O2: (a,c)1%, (b,d) 0.1% - 80 -
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