FORM TECH REVIEW_vol31
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図1実験装置の模式図削削除除ししなないいででくくだだささいい■超硬合金は,硬さと破壊靭性の両特性に優れることから,代表的な耐摩耗材料として,切削工具や金型などに広く利用されている.一方,超硬合金はWやCoなど希少元素を多く含むため材料コストが高く,高硬度であるため成型後の二次加工においても大きな加工コストが必要である.安価で加工性の良い鉄系基材等の表面に超硬合金をコーティングすれば,超硬合金の使用量や加工コストを減らすことが可能になる.近年溶射技術の進歩1)により,緻密な超硬合金の皮膜を得ることができているが,溶射皮膜は基材との密着性が不十分である場合がある.レーザメタルデポジション(以下LMD)は,基材上に粉末を供給しながらレーザを照射することで,基材との密着性に優れた肉盛層が得られる手法である.また,肉盛層を3次元的に積層することで,ニアネットシェイプの造形も可能である.LMDは,耐食性や耐摩耗性の向上を目的として,Co系やNi系などの材料が使用されることが多いが,さらに耐摩耗性を向上させるため,炭化物等の硬質粒子を複合化した肉盛材料が使用される場合もある2).一方,粉末冶金プロセスで得られる超硬合金のような数m以下の微細な炭化物が高い体積率で含有された肉盛層の形成については,いくつかの報告3-5)はあるものの,硬質粒子複合型材料のLMDについての報告に比べて少ない.これは,超硬合金粉末をLMDに適用すると,肉盛層に気孔や割れなどの欠陥が多数発生し,実用化が困難であるためと考えられる.気孔欠陥については,WCの分解もしくは液相中への溶出によって発生した炭素が酸素と結合し,COガスを発生させるためと言われている3).ることはできない.そこで,本研究では,LMDに適用可能な雰囲気制御用チャンバーを作製し,超硬合金のレーザ肉盛における処理写写真真位位置置■1.研究の目的と背景2.実験方法WCは耐酸化性に乏しく,大気中では600 ℃付近から酸化による分解が開始することが知られている6).一方,密着性の良好な肉盛層を得るためには,結合相であるCoや基材の融点以上に加熱する必要があり,酸素が介在する状態ではWCの分解が避けられないことが,超硬合金のLMDを困難にしている要因の一つと考えられる.通常,LMDにおいては酸化抑制のためにシールドガスを使用するが,周囲の大気を巻き込むことから完全に酸素を遮断す*大阪産業技術研究所 加工成形研究部 主任研究員雰囲気中の酸素濃度の影響について調べた7). ■■■■■用雰囲気制御チャンバーの作製レーザ加工中の雰囲気を制御する方法としては,密閉容器内にレーザ光透過窓を取り付け,レーザを照射する方法が知られているが,LMDにおいては,粉末材料をキャリアガスとともにレーザ照射部に供給する必要があるため,上記の方法は適用できない.本研究では,図1に示すように,アクリル製チャンバー内で加工ヘッドが可動できる半密閉容器を用いた.酸素濃度は,チャンバー内に導入するアルゴンと空気の流量により制御した.また,比較のため,同様の条件で通常の大気中雰囲気でもLMD実験を行った. ■ 実験条件基材は板厚10 mmのSUS304を用いた.粉末は,超硬合金の造粒焼結粉(GTV製WC-12Co,粒径45 m ~90 m)を用いた.レーザは,最大出力2 kWの半導体レーザ(Laserline, LDM-2000-60)を使用し,ビームスポットは加工点で5 mm ×5 mmの正方形とした.粉末の供給はArガスをキャリアガスとして用い,粉末供給量は11.4 g/minとした.キャリアガスの流量は5 L/minとし,レーザ照射中はノズルからシールドガスとしてArを15 L/minで供給した.ヘッドの移動速度は5 mm/sに固定し,種々のレーザパワーで肉盛実験を行った.半導体レーザ粉末供給機アルゴンガス圧縮空気光ファイバ試験片カメラゴムシート余剰ガス排気酸素濃度計T. Yamaguchi- 78 -雰囲気制御を利用したWC-Co超硬合金の雰囲気制御を利用した■■■■■超硬合金のレーザメタルデポジション技術の開発レーザメタルデポジション技術の開発山口 拓人*山口拓人Report

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