図■■■測温結果.(a) 空間平均温度の変化.Ti-6Al-4Vの液相線温度 Tl は 1655℃,固相線温度 Ts は 1577℃である.(b) t =0.12 sとt =0.30 sで得られた温度ヒストグラム11). ■■■■考察■溶融挙動には,キーホール,溶融池の浮き上がり,スパッタリング,ボールの4種類があった.ここでは,2つの解析手法を組み合わせることで,溶融挙動のプロセスを詳細に明らかにした.第一の分析手法は,2色パイロメーターで測定したR1,R2強度を用いて対象物の相を特定するものである.第二の分析手法は輝度からスパッタ量を定性的に評価するものである.本稿では紙面の都合上,キーホールの形成過程の議論を示す.全種類の溶融挙動は,参考文献■■)で議論しているので,参照されたい. ■■■■■■キーホールの形成過程■キーホールは,以下の過程で形成した.図12cに示すように,くぼみ長さLとくぼみ深さDは,レーザ照射開始直後にはほぼ同じ速度で急増した.このとき,同時に多くのスパッタの発生が認められたため,駆動力はガス圧によるものと思われる.その後,Lの増加傾向は緩やかになったが,Dは増加し続け,その結果,キーホールが形成された.そして,t = 0.1 s付近でDの拡大が停止した.ここでは,これらの変化の原因について,熱画像やスパッタ量と比較しながら考察する. くぼみ長さLは,図12a,cに示すように,スパッタ発生量が最大値になると徐々に長くなる傾向が見られ,これより,スパッタ発生量とくぼみ領域の広がりに相関があることが示唆された.また,レーザの照射位置は,くぼみの下部に維持されていた.そのため,Dが大きいとLがレーザ照射の影響から遮断される.その結果として,Lの変化の傾向は徐々に大きくなったと考えられる. くぼみ深さDは,t = 0.1 sで増加しなくなると同時に,溶融池が形成している.このことから,溶融池がDの拡大を防いでいることが示唆された.下層の透過率は,レーザ照射点にある材料の状態によって変化する.レーザ照射点が粉末床の粉面にある場合,レーザ光は粉末粒子間の隙間を通って下層に到達する14).一方,溶融池では,レーザ光が部分的に反射される. ■■■■粉末床の点照射挙動の小括■本研究では,粉末床上での金属粉末の溶融形態の変化を調べた.Ti-6Al-4V粉末を200Wのレーザで1点1秒間溶融した.レーザ照射中の溶融挙動は,X線と熱画像を組み合わせたその場同時観察で捉え,その結果,以下のように分類された(図13). 1) レーザ照射直後は,くぼみ部分の長さLとくぼみ部分の深さDがほぼ同じ速度で急速に増加する. 急激に増加し続ける.その結果,鍵穴のような形状が発生する. 2) スパッタ発生量が最大値に達した直後から,くぼみ部の長さが徐々に増加する.その後,くぼみ深さは3) 溶融池の生成と散乱を交互に繰り返す.くぼみの深さが伸びなくなると,溶融池が形成され,滞留し始める. 図■ X線透視像と二色温度計で得られた溶融挙動の比較.(a) X線透視像における測定線(x:0-240 px, y:50px)上の平均輝度.輝度が低いほど,粉末粒子の数が多いことを示す.(b)上面から見た溶融池の空間平均温度.図9からt =0-0.2秒の範囲で抽出したグラフ.TlとTsはそれぞれ液相線温度と固相線温度.(c) 図6からt =0-0.2秒の範囲で抽出した陥没域の深さDと長さL11). - 64 -
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