図■■スパッタA, Bの軌跡.青色点はスパッタA,赤色点はスパッタBを表す.塗りつぶされた点は散乱,白抜きの点は吸収を表す.スパッタBはt =0.061-0.175 sに観察視野外にいたためグラフが途切れている.θout:散乱角,θin:落下角11). 図11aは,溶融池の平均温度の時間変化を示す.t = 0, 0.02, 0.04, 0.08 s では,測定領域内に溶融池が発生しなかったため,図 11a にはプロットが表示されていない.平均温度は,t = 0.2 s で最も低くなり,Tave = 1612 ℃となり,低粘度の固液共存温度となった.その後,平均温度Taveはレーザ照射終了まで安定し,1800 ℃に回復した.図11bは,溶融池の温度ヒストグラムである.t = 0.12 秒の溶融池サイズは t = 0.3 sより小さく,t = 0.12 sの高温領域(2400 ℃以上)の割合は t = 0.3 sよりも広くなっていることがわかる. 図■■溶融挙動評価;X線透視画像を溶融池とへこんだ領域に着目して145×145 pixelに切り取った.(a) Raw画像,(b) 二値化画像(白線は輝度値230-240に対応),(c) 二値化画像を重ねた補正画像(輝度値40-120).観察時間t = 0.191 sとt = 0.211 sの四角で囲った枠内はそれぞれ輝度値が異なるが,輝度値が低いほど粉末粒子が多くあることを示す11). ■■■■■■くぼみ形状の時間変化■くぼみ形状の時間変化を図9に示す.赤色の点は,くぼみ深さDを示している.レーザ照射開始直後,Dは3.2 mmに達するまで急増し,t = 0.16 ~ 0.2 sは定常値を維持した.その後t = 0.2 ~ 0.28 sでは溶融池の浮上,および物体の溶融池への吸入により急減した.さらにその後,Dは徐々に減少したが,t=0.901秒になると45μmほど増加した(図9右下の黒矢印).青色の点は,くぼみ領域の長さLを示す.t =0 ~ 約0.16 sの間に急減し,その後,徐々に落ち込み幅が大きくなる傾向が見られた.溶融池が浮上した後,くぼみの左側にあった物体が溶融池に吸い込まれたため,くぼみの長さは再び急増した.またLlは徐々に長くなり,Lrは溶融池が浮上した後,定常状態になった. 図■■デプレッションゾーンの時間変化.左右の凹部長(Lr, Ll)は,それぞれ凹部の左右の輪郭とレーザ照射点との水平距離として定義した.凹部長Lは,LrとLlの和である.また,レーザ照射点から窪地の底までの距離を窪地深さDとした11). ■■■■■■熱拡散■図10は,t =0.14 ~ 0.98 sまでの温度分布の時間変化を,対応する側面からのX線透視像とともに示したものである.どの熱画像でも,溶融池の端から中心に向かって温度が上昇していることが分かる.図10cのt = 0.14 sに見られるように,溶融池の中心部には暗い部分があり,この部分は温度測定範囲(1300-2400℃)から外れていた.したがって,最高温度は2400 ℃以上であったと推測される.温度分布の形状は,レーザ照射が終了するまで,円形(図 10c; t = 0.001, 0.191, 0.289 s)と不定形(図 10c; t = 0.023, 0.033, 0.133, 0.211 s)を形成する工程が繰り返された. 図■■■上から見た温度分布の時間変化とそれに対応する横からのX線透視像.t = 0.70 sでは,t = 0.58 sの温度分布の輪郭が点線で描かれている11). - 63 -
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