FORM TECH REVIEW_vol31
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■■■■ ■溶融挙動の分類■図7は,レーザを照射した粉末床の特徴的な溶融挙動を示した.溶融挙動は,X線透視像から以下4つに分類される;キーホール,溶融池の浮き上がり,スパッタ,ボールX線透視像は,その明るさにより,4つの領域が目視で識別でき,(i)大気,(ii)くぼみ領域,(iii)粉末層,(iv)溶融池の順に輝度が減少する13).すなわち,X線透視像の上側の白い領域は大気(i),下側の黒い領域が粉末層(iii),中央の粉末層に比べてやや暗い領域が溶融池(iv),中央上部の大気に比べてやや暗い領域がくぼみ領域で(ii),大気と粉末が存在していることが分かる.また,図6bに示すように,2つの大きなスパッタが観察された.これらのスパッタをスパッタA,スパッタBとした. 図■■左右のくぼみ部分の長さLl,Lr,傾斜角θt,レーザ入射角θi,くぼみ部分の深さDの定義.(a)溶液プール生成前,(b)溶液プール生成後11). ■■■■点照射時の金属粉末の溶融挙動■■■■■■■■線透視像から判別される領域■図6は,コントラストが明瞭なX線透視像の3例である.画像の左下と右下の黒い部分は,真空チェンバーの枠を表しており,これはX線が真チャンバによって完全に減衰していることを示す. 図■■X線透視画像:(a)レーザ照射前,(b)レーザ照射中(例としてt=0.18 s),(c)レーザ照射後11). 化.まず,くぼみの深さが大きいキーホールが観察された.くぼみ深さの傾斜角は約120°であった.次に,溶融池の浮き上がりと気孔の形成が観察された.図7に示すように,t=0.211秒の赤枠で示した領域では,溶融池の上部の明るさが0.02秒前のX線透視像より暗くなっている.これは,くぼみの周辺にあった物体が内部に移動していることを示している.浮遊していた溶融池は,これらの物体と合体して大きくなった.溶融池の断面形状は,円形から縦に細長い楕円形に変化した.第三に,2 つのスパッタA,Bが観測された.図 8 にこれらの軌跡を示す.スパッタAは溶融池から負のx方向に飛散している.0.1 秒間同じ場所に留まった後,スパッタ A は吸い込まれるように溶融池に戻った.スパッタBは溶融池から正のz方向に飛散し,観測領域の外側に移動した.その後,スパッタBは観測領域内の溶融池へ落下した.第四に,球状の溶融池が観察された(ボール化).t = 0.133秒の時点では,X線透視像と熱画像の両方で溶融池の形状が円形であることが確認された.溶融池は,浮き上がった後も球状であった(図7,t = 0.211 s)ため,溶融池と粉末床の間に中空構造が形成されていたことが推測される.その後,t = 1.001 s における溶融池の曲率半径は t = 0.755 s よりも大きくなり,溶融池の表面はより平坦になった. 射を実施し溶融・凝固させ,その過程をX線透過と二色温度計で同時測定した.得られた画像から粉末床と溶融池の形状を測定することで,溶融過程を評価し,溶融池の生成・拡大過程のメカニズムについて検討した. ■■ ■実験方法■■■ ■■■評価装置の改造■溶融挙動可視化装置は,X線透視による溶融池形状と溶融池近傍の温度の同時計測をするため図4のように改良した.初号機(図2)からの主な変更点は,レーザヘッドを粉末床の垂直方向から15°傾けて配置したことと,粉末床の直上に二色温度計を配置したことである.二色温度計は,粉末床の直上に配置することにより,形状のゆがみなく温度分布を観察できるようにした.また,レーザ照射,二色温度計の計測,X線透視の撮影の開始と終了の時間は同期制御した. 図■■改良した溶融挙動可視化装置の模式図11). ■■ ■ ■溶融挙動の画像処理と定量評価■画像処理ソフト(Fiji)12)を用いて,解析用の生X線透視像から2値化画像と重ね合わせ画像を作成した.この後,左右のくぼみ長さLlとLr,およびくぼみ深さDを測定した.図5にこれらの数値の定義を示す.左右のくぼみ長は,それぞれくぼみの左右の輪郭とレーザ照射点との水平距離と定義した.くぼみ長Lは,LlとLrの和とした.t=0.001秒におけるくぼみ長さの中心点をレーザ照射点,くぼみ深さ方向に伸びる線とくぼみの輪郭の交点を底点と定義した.また,レーザ照射点からくぼみ部の底面までの距離をくぼみ深さとした. - 62 -

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